東方のあけぼの

政治、経済、外交、社会現象に付いての観察

「日英同盟」平間洋一 角川ソフィア文庫

2015-09-08 09:48:30 | 安全保障
大正時代が分からないと未来の方針を立てられないとは再三このブログで繰り返して来たことである。「坂の上の雲」など百万回読んでも何も出てこない。幕末偉人伝とか龍馬、西郷などが主人公の物語を百万回読んでもなにも出てこない。

未成年のマスターベーションみたいなもので、ボーっとなって終わりである。で大正時代の柱の一つが「日英同盟」である。「我が国外交の骨髄だか精髄」である。

この問題に対する書籍は皆無に近い。わずかに有るのはノンフィクション作家(つまり専門家ではない)のものか、モノグラフである。モノグラフは私の射界にないが、かなりの数が有るかも知れない。しかし性質上、ミクロ的分析がほとんどであろうし、近視眼的なものが多いのは疑いがない。一般的に読める物で価値の有る物は皆無であろう。「であろう」としたのは読書量の少ない小生の謙遜にすぎない。

そこで頭書を最近読んだ。海上自衛隊出身で現在慶応大学教授らしい。軍事史が専門らしい。一読了解というほど、文章は明快ではない。また、250頁に詰め込みすぎている。なにしろ太平洋戦争から現代の安全保障問題まで触れている。せめて上下二冊にしてもうすこし丁寧に書くべきだった。

だが類書がないとなれば、これを参考にして資料を広げて行くしかない。そういう意味では貴重な書である。最初から偏向しているプロパガンダ臭いものは研究の核とはなり得ない。その点では本書は合格のようである。

著者の資料は当事者の回顧録なような物もあるが、圧倒的に多いのは内外のマスコミの記事、ジャーナリズムに発表された外交問題の主張などである。政府資料(公式、非公式)は非常に少ない。これは無理のないことではあろう。

したがって「読み」には注意が必要である。ま、労作としなければなるまい。