「金融の神様」「銀行のマエストロ」と呼ばれていた、前FRB(アメリカ中央銀行)議長のグリーンスパン氏が自らの失敗で、金融危機が起きてしまったと、アメリカ下院で述べた。自らの過ちを認 めたのは潔いかもしれないが、反省の仕方が違うような気がする。
18年にもわたり、FRB議長を務めたカリスマ的存在であるが、サブプライム問題について規制を加えるなどの対応ができなかったというのである。経済学者は、一つの現象に対して全く反対のことを平気で述べる種族である。自分の考えに近い原因をどこからか拾って来て理由とする。
当然百者百様の意見が交わされる。その後に起きることなどについても、社会現象であるからか責任は取らない。今回の、グリーンスパン氏にしても、サブプライム問題が起きた時に、規 制を加えず野放図な融資が問題だったというのです。それは、身勝手な政府側からの見方にすぎない。
サブプライム問題の本質は、弱者がより多くの金利を負担する制度への反発である。悔しければ、もっと有利なローンを選択できるようにお金持ちになりなさいということである。彼は危機の予兆を見逃したと証言しているが、大きな社会現象を認識することができなかったのである。
もっと早い時点で規制を加えていれば、社会的弱者を切り捨てて終わったのに、銀行は救済できたというのである。そうした意味で、問題を広げ世界的な危機になったというのである。
サブプライム問題は、アメリカの格差社会が広がった信用不安である。その背景には、アフガニスタンやイラク戦争による、経済的・社会的不安が根底にある。彼の無策ではなく、ブッシュの失政なのである。
経済学者は、結果にレッテルを貼るのが本職である。彼らにいかほど社会を変動させる力があると思っているのだろう。