そりゃおかしいぜ第三章

北海道根室台地、乳牛の獣医師として、この国の食料の在り方、自然保護、日本の政治、世界政治を問う

医師のモラルは失墜したのか

2008-10-25 | 政治と金

10年以上前のことである。ニューヨークのフリーウェイで交通事故があった。たまたも通りかかった医師が、応急処置を施した。処置された人は亡くなった。死因については、ははっきりと記憶していないが、医師は訴えられて多額の弁償をしたとのことである。

この医師は、何食わぬ顔で見過ごせば何事もなかったのである。全米の医師はこぞって反対をしたが、医師は敗訴した。今起きている医療問題の「たらいまわし」は、この事件を教訓化している。

どんな状況でも、診療さえしなければ少なくとも、医師個人は非難されることも倍賞請求されることもないからである。ちょっと厄介なようだと、断るに越したことがない。こんなことで医師55のモラルが担保されるのだろうか。人の命を預かる職業だと言えるのであろうか。

獣医師にしても大きく変わることがないが、幸い経済動物を扱っているためにそれほど大きな問題にはならない。事なかれで通す獣医師より、結果的に救うことができなくても積極的に診療する姿勢を、ほとんどの農家が評価してくれる。

医師の場合は、倍賞問題にまで及ぶ。新しい生命が生じる時には、医師は二つの生命を預かることになる。しかも緊急性が高いために、過重労働に加えて訴訟の対象にもなりやすい。産科の医師が減るわけである。分娩は生理現象である。いつから、医師が立ち会わなければ出産できなくなったのであろう。

今回、もっとも医師の密度が高い東京で、たらい回しが起きた。医師のモラルとは所詮お金である。医師が減っているのではない。都会にしか医師は集まらなくなった。その都会でタライ回しが起きた。

田舎は、たらい回しをしようにも回すだけの病院がない。あっても医師がいない。田舎の医師は厄介のものでも、専門外でも関わることになる。そして過重労働と責任問題が起きる。

獣医師は年間900名ほど資格を取る。今や半数が女性で、小動物(ペット)志向が700名のもなるというのである。大動物(産業動物)志望が極端に少なくなってきた。収入が多くきれいな方に向かうのであろう。都会志向となる。

医師の絶対数が少ないのではなく、医師への過重な負担と責任問題がいびつな形で大きくなって、事なかれ主義に陥っているのである。医師にモラルを求める時代ではないのかもしれない。

コメント (2)
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