何とか北京オリンピックを終わらせた、中国は大きな転換期に差し掛かっている。食の安全にしても、経済成長や環境問題、それに民族問題や疲弊する地方の問題にしても、それらのすべては農村問題だといえる。
中国の農村問題は「三農問題」と言われている。農業、農村、農民の問題を言うのである。これらは関連しあいながらも、より一層問題が深刻になりつつある。
中国政権は、中国共産党が担っている。中国革命とその後の建国は、中国共産党が成し遂げた業績である。もちろん毛沢東が行った粛清や文化革命など、多くの問題はあったとしても、中国共産党を支え続けてきたのは、農民である。
現在でも中国農民は人口の75%以上である。彼らの賃金が極端に都会と開いている。その都会の発展を支えているのが、安価な農村労働力である。
農村は利潤を上げるために、違法行為すれすれのことまでやるのは当然である。食の安全についても、規制ばかりを論じるのではなくその背景を考えなければならない。何処で、誰が、何のために、どうして生産しているのか知る必要がある。規制しても、新たな問題が起きるのに決まっている。
又、外貨を稼ぐ織物などの工場を支えるのも、安価で豊富な農村労働者である。農家は戸籍を自由に移すことができない。少し時間の長い、季節労働者といえる存在である。都会に住所を移すことができないからである。
賃金格差は、すでに6倍を超えていると言われている。これが社会主義思想に基づく、国家建設の結果なのか。貧富の格差は、地方をより一層疲弊させる結果になっている。少数民族地域に、中央で行き場のなくなった漢族が支配者として居座る構造が、民族問題を複雑にしている。
三農問題は深刻ではあるが、これからの中国の行方を見るのに極めて重要な視点であるといえる。