日本の農業問題は、戦後様々な局面を迎えるごとに変質してきて、今日に至っている。きわめて複雑な状況になっている。そこで、本ブログをご覧いただいている方に、何度かに分けて、日本の農業問題の深刻さをお伝えしたいと思います。当分は問題の列挙になることをお許し願いたい。
私はてっきり軍事お宅と思っていた石波茂氏が農水大臣になって、極めてシリアスな農業問題を提起するようになり、この男を見直す現在である。鳥取県の出身で、当選当初から農業問題に取り組んできた実績と、くそまじめな性格から真っ向から減反政策を取り上げている。
「農政改革関係閣僚会合」を立ち上げ、メンバーは農水省、財務省、経産省、総務省、官房長官で構成している。減反政策だけで論議すると、短期的視点と狭義の農業だけの中の論議に終始する。広く長い目で食料の在り方を論議していただきたいものである。
その減反政策、コメの生産調整のことであるが、本来は価格調整のためのものであり、農家に一時的な非生産をお願いするものであった。それが、際限なく継続される中で農家から生産意欲を奪う結果になった。これが減反政策の最も大きな問題である。
生産しなければ金を出す政策は、一時的には存在することがあってもやむを得ないかもしれないが、30年も続き、転作もままならず耕作放棄地が、農地の10%を超えて38万ヘクタールにもなる、異常な現実がこの国の農村と農家を蝕んでいる。
その一方で、新たな農地の開墾も進めている。諫早湾の干拓がいい例である。片方で放棄させておきながら、片方で土建屋を潤すような農地の造成を行っているのである。しかもその多くは、環境破壊につながっているのである。
250万戸の農家のうち、70%は減反に応じている。残りの30%は意欲的に生産し続けている。国策に応じて減反している農家のおかげで、一定の価格が維持されている。その最も恩恵を受けているのが、実は減反に応じていない残りの30%の農家である。
生産調整に応じない農家は、ほとんど例外なく大型農家である。生産意欲も高く、販路も自ら開拓する。何よりも若い農家が多い。彼らは奔放な発言を報道番組委で繰り返す。新自由主義者たちの支援も厚く、最も恩恵を受けている彼らに、発言資格がるのだろうか。
生産調整は転作を奨励数政策でもあったのであるが、現実には転作せずに放棄する農家が多くなっている。農地が宅地評価になるチャンスを待っているのである。あるいは、高齢化の進行する中で担い手がいなくなっているのである。
一貫性のないちぐはぐな農業政策が、アメリカ依存へとシフトしてゆくのである。畜産への食体系の転換と、コメ消費の極端な落ち込みは、アメリカ穀物の侵入によるものである。