京都大学の山中伸弥教授の、ノーベル賞受賞を素直に喜びたい。山中教授は、京都大学の生え抜きではなく、現在の地位を確保するまでの、研究者としての道は決して平たんではなかった。
それ故、山中教授は研究成果の意味と、そのためになすべきことを知っていた。研究一本の人たちは、とかく世間と隔離して成果を上げることが少なくない。ましてや、日本の医療社会は、近寄りがたい白亜の殿堂である。
山中教授は、自らの研究成果のips細胞を、臨床的に応用しなければ意味がないことを知っていた。そのため、異分野の医療関係者に幅広く、技術を紹介しその可能性の応用を求めたのである。
従来の研究者たちが、やってこなかったことである。山中教授の本当の成果は、こうした真摯で謙虚な姿勢による、臨床応用への模索を怠らなかったことである。
もう一つは、山中教授は日本の研究体制の協力を、国に求めたことである。発端を開いた山中教授の技術は、人的にも資金的にも圧倒的なアメリカに、このままでは追い越されてしまうことを案じたのである。
政府への協力は、医療機関の垣根を外すことに留まらず、予算を引き出すことも、山中教授はやってのけたのである。
アメリカ先行への意欲ははっきりしている。医療各分野における、ips細胞の特許の取得である。金儲けのために動いているのであるが、そのために資金的援助は膨大なものがあるからである。
山中教授は、白亜の殿堂に留まることなく、医療分野に政治的分野にも、自らが開発した技術の広がりに汗を流したのである。
思ったより、2,3年遅れはしたが、ノーベル賞受賞はその成果が報われたことを意味し、多くの注目を得ることになり、さらなるステップへの大きな力ないなるものである。
山中教授のノーベル賞受賞を素直に喜びたい。