時が経つにつれて、中国の反日デモの実態とその後の中国が負わなければならないことが、次第に明らかになってきつつある。
全国100カ所程で行われた今回のデモであるが、参加人数はせいぜい数千人程度であり、中国が国内でてひた隠す天安門事件の、僅か10分の1程度である。しかも、9月18日の柳条湖事件記念日で、ピタッと止まってしまった。経済特区で農村出身の若者の多いの深圳では、共産党支部が攻撃されている。
私服の警察官がデモを先導したり、参加者に日当が配られた事実があったり、イオンに対立する店舗の人物の扇動で破壊が行われたりと、このデモは上部からの指示で、国策であることは間違いない。
破壊行為が商敵の日系の商店やスーパーを狙った連中の活動は、中央政治局の薄熙来をスキャンダルで追放する行為と同質のものである。スキャンダルの真贋は不明である。でっち上げであっても一向に、政権は頓着しない。
しかし、こうしたことを国外から指摘しても意味がない。現在の中国は、国家資本主義あるいは、 Red Chapitalism と呼ばれる、極めて強力な中央集権国家である。しかもあらゆる権限が、共産党に集中する。国家主席があらゆる組織を越えて、決定する権限を持つ。
野田はこのことに無知だった。尖閣諸島が棚上げになっていることも、日本が実効支配していることを中国国内では知らされていないことも、野田は知らずに、最高絶対権力者の顔を潰したのである。
国家権力による、反日デモが先進国の基準に合致することがなくても、これが現在の中国の政権であり、経済活動を行いそれに依存する先進諸国である。都合のいいところだけを非難するのは、身勝手である。
国家資本主義は、あらゆる経済行為の過程で不正行為と思われる諜報活動、特許の侵害に繋がる作為を日常的に行っている。スポーツ選手の年齢詐称やホルモン投与など、国家が介入すれば闇に放り込まれたままになる。経済活動でも政治活動でも同じである。
こうした行為が、世界第2位となった経済大国が今後も続けるためには、さらなる発展をしなければならない。不正、反倫理的、違法行為はお金がある間は、表面化しないからである。
そう考えると、やがて止まるであろう中国の経済成長は、今回の反日デモが引き金になる可能性がある。事実8月からの成長は、2%そこそこの報告が上がってきている。
国家主導の反日デモは、中国は天に唾する行為になったかもしれない。
国家権力維持のために、事実をねつ造したり、暴力や武力行為で民衆を押さえつけるのは、今後の中国の発展に貢献することはない。今回の反日デモで、暴力行為反対の「理性愛国」のプラカードの若者が、ネットで一部流れたことは救いであったかもしれない。