元外交官の孫崎亨氏の、「世界」の『尖閣問題 日本の誤解』を読んだ。孫崎氏はこのところ、著書「戦後史の正体」などで評判の人物である。
本ブログで何度か尖閣については意見を書いたが、孫崎氏の論評と概ね重なる。日中はこれまで、二度にわたり尖閣を棚上げしている。
これは、日本の実効支配を認めるという、中国側からの意思表示である。先送りして、日本との経済関係の実利を採ったとみるべきである。
ところが、外務官僚は「尖閣に領土問題は存在しない」という、政治家が聞いたら涙をだして喜びそうな言葉を用いて、この問題を伏せてきたのである。姿勢としては判らなくもないが、棚上げすることを、田中角栄も園田直も認めたうえで、交渉が進んだ経過を無視している。
「領土問題は日本側に存在しない」ならまだしも、相手を認めないようでは解決の糸口すら見つけることができない。
「尖閣には日中間に深刻な領土問題が存在し、せっかく棚上げしていたのに、今でも中国人を民度が低いとして”シナ人”と蔑称する石原慎太郎が、これまでの経緯、外交の礼を無視して火をつけた」と、認めるべきである。
そこで止む無く更に無知な野田が、中国の国家主席のメンツを潰すことになるとは知らずに、そのままにしますからと国有化したのである。
このところ海洋で元気な中国に対して、近隣諸国は「南シナ海の行動宣言」を2011年4月に締結している。そこには、 ・平和的な手段による解決 ・領有権争いを紛糾拡大さる行動を自制する、とある。
今回の日中両国の行動はこれらに反する。野田は国有化行為がそうした意味を持つことを認め、日本は領土問題に前向きになり、この規範に沿った行動をとるべきである。