中国の領有権意識を、外交に無知な野田が火をつけてしまった。72年と78年に、日本が実効支配する尖閣諸島を棚上げすると言ってくれた。これは日本にしてはありがたいことであった。
こうした経過を踏まえないまま、石原が多分アメリカに突かれた、東京が所有すると言い出した。石原は、わざわざその発表にアメリカの地を選んだ。石原が買ったままならもう少し、中国も経過を見たろうが、こともあろうか野田が胡錦濤の忠告にもかかわらず、反射的に国有化した。
野田はこの意味を理解しなかった。尖閣を棚上げした周恩来やと小平の先送りの意味を理解しなかったし、何よりも知らなかった。
高坂正尭の愛弟子の、前原誠司の「領土問題は存在しない」という言葉に酔いしれて、野田はこの言葉の呪縛に陥った。
中国は、南沙、西沙そして中沙と南シナ海を今や、三沙と呼んで領有権を主張し始めた。ベトナムの強い抗議にもかかわらず、南沙には軍事施設をつくりはじめ、こんなに南まで、実効支配の既成事実を築いている。(左の地図はクリックすると大きくなる)
フィリッピンが領有を主張するスカボロー諸島にも、強引に施設をつくり始めている。国力の差によって、フィリッピンは抗議するしか手立てはない。頼みのアメリカは、中国との悶着を嫌っている。
フィリッピンは合同訓練を、この地域でアメリカと行いたいが、領土問題ではどちらにも与しないとする態度を貫いていて、フィリッピンをがっかりさせている。中国による経済制裁も大きい。
アメリカは、中国への後ろ盾にはならないのである。アメリカは、貿易量でも国債の所有金額でも、中国に立てつくことができなくなっている。
中国誌は、尖閣(釣魚)に中国の監視船が毎日行って、国土の防衛を行っていると、連日報じている。中国国民は、尖閣の日本の実効支配する現状すら知らされていない。
中国問題に全く音痴であり無知であった野田は、恥を忍んで領土問題は存在するというところまで下がって、ベトナムやフィリッピンそれにマレーシアやインドネシアなどとも協力して、取り組むべきである。
アメリカ依存で解決するものではない。
ブレないことと、現状を詳細に分析し判断することとは違うのである。野田に残された時間はなく、選択肢も少ない。