
ソビエト、ロシアは石油を巡る利権など中東に無関心か蚊帳の外であったが、プーチンはそれを逆手に取って反アメリカ支援に乗り出したのである。多分どこの国でも、どの指導者でもよかったのではないかと思われるが、シリアのアサド政権の支持に回ったのである。口実は各国と協力してのイスラム国(IS)の打倒であるが、やっていることは武力介入理由とは全く異なり、反アサド自由戦線への空爆である。いつ倒れてもおかしくないアサド政権は延命した。そして今月北部の大都市の古都アレッポを陥落したことで、プーチンは勝ち誇ったようにこれまでと一変して余裕の外交へと転じた。
元々不仲の関係だった、トルコのエルドアンとでさえ仲直りし、自国の大使が公衆の面前で殺害されても、両国の関係は変わらないと、まるで別人の対応である。
シリアを巡っては、アメリカの影響力を完全に排除することに成功した。オバマはレイムダック状態である。次期大統領のトランプは、プーチンと懇意のチラーソン氏を国務長官に就任させる方針である。
トルコとイランを従えて、シリアの和平協議にロシアが乗り出した。国連もこれを、「和平の実現場目標で手段は問わない」と容認している。ここにはアメリカもいなければ、かつての宗主国のフランスやイギリスもいない。ロシアで開催される和平会議は、ロシアが主導した和平会議になるに違いない。
プーチンは決してきれいなことをやっているのではない。厄介なシリア難民はヨーロッパに引き受けさせ、シリアを手なずけたのである。まるで漁夫の利を絵で書いたようである。
プーチンは目的のためには手段を選ばない。国内の反対勢力や評論家やチェチェンなどの独立運動などには、圧倒的な武力による弾圧・殺戮を繰り返す。クリミアの併合もウクライナへの介入も、多弁を装うことなく結果だけのために動く。プーチンこそクラウゼヴィッツの申し子ではないか。プーチンとトランプが展開する世界は、恐怖政治になる予兆すらある。
