「原発は反対であるが、今ある原発は老朽化するまで使えば良い。新たな原発を作らなければよい」というそうした原発再稼働容認あるいは原発もったいない論は、ある意味人の好い穏健な、原発相稼働容認派の人たちが意外と多い。そうした人たちは、今回の胆振東部地震による北海道全域停電に、泊原発が稼働していればこんなことはなかった。すぐに再稼働をするべきと本ブログのコメントなどに散見される。
しかし、そうした原発再稼働容認の考えの人たちは福島原発事故以来の動きをご存じないからである。泊原発は2012年5月に停止されてから稼働はしていない。その間にも、新たに設けられた再稼働に向けて原子力規制委員会に沿った対応を行っている。この間に維持のためだけに年間700億円の費用が掛かっている。停止後にも維持だけに、4200億円以上かかっていることになる。
当初の再稼働に向けての費用は、200~300億円を見込んでいたが、すでに2000億円にも達している。炉心冷却施設やポンプ車、冷却タンクの設置、16.5メートルの防潮堤の計画は、地震時の液状化による沈下が問題になっている。何より北電側の提示資料にもなかった活断層がほぼ直下にあることも解ってきた。今回の、胆振東部地震は活断層を外れているにも拘らず、震度7を超える内陸型地震が起きている。結論から言えば、原子力規制委員会が正常に機能すれば、泊原発の再稼働はないといのである。いずれにしろこうした費用は全て、国民が負担することになる。電力価格に上乗せしたり税金として、国民に広く負担をかけることにになるのである。
今回の胆振東部地震による北海道全域の停電・ブラックアウトは、北海道電力の企業としてのコンプライアンスの欠如を示した結果と言える。
北電が泊原発再稼働に向けて金と労力を注ぐことによって、北海道各地に広がる各発電所の維持管理に手を抜いていたことになる。泊原発再稼働を支持される方たちは、こうした施設の老朽化を聞いたからであろう。巨大施設の一極集中の原発思想は、苫東厚真発電所を巨大化し、今や北海道電力需要の半量を担うまでになっていた。
東電が、福島事故以来LNG(天然ガス)に力を入れてしのいでいるが、ロシアに近い北海道こそLNGに力を入れるべきである。ようやく一基が来年2月に稼働する実に緩慢な対応である。
今回の胆振東部地震で、福島原発事故の教訓があったにもかかわらず、施設内の冷却用電源が機能せず半日以上経ってようやく外部電力によって冷却が開始された。福島の教訓がなければ、こうした対応すらできなかったであろうし、原発は崩壊して放射能が西風に乗って札幌は全戸避難することになっていたであろうと思うと、ゾッとする。
さらに原発再稼働に固執する結果、再生可能エネルギーの開発に冷淡になり開発を遅らせる結果となっている。北電などの原発再稼働推進派の人たちは、こうした再生可能エネルギーが拡がることによって、原発不要論が持ち上がることを嫌っている。原発が怖ろしいのは、放射能だけではない。