安倍晋三は無役のころ、「たった10日でアメリカ人が作った憲法」と言って憚らなかった。平気で嘘をつく男だと知ってしまっている今となっては、虚言の一つとして片づけることもできるが、改憲の根拠にされたのではたまったものではない。
確かに1946年2月ごろにGHQ草案は示されたが、多くの現在に至る国民の権利が加えられたのは、憲法改正小委員会(芦田均委員長)で論議を重ねて決められている。ETV特集「義男(ギッタン)さんと憲法誕生」2日の放送を見た。5月12日(火)24時(7日0時)に再放送がある。
戦前から弁護士として活躍していたクリスチャンの鈴木義男も小委員会のメンバーとして、多くの提言行っていた。
鈴木義男氏は、一般の人に優しく法を説きギッタンと親しみを込めて呼ばれたが、戦前は軍事教練に反対して教壇を追われたが東京で弁護士に転身し、河上肇や宮本百合子や韓国の文学団体など、治安維持法違反者の弁護にも尽力していた。
小委員会で鈴木義男は、9条の戦争放棄の文言の前に、「日本国民は、正義と秩序を基調とする平和を誠実に希求し、」を入れることによって戦争放棄の意味を平和に持たせることになった。GHQ草案には全くなかった生存権は、25条に追加され、「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」は生活保護法の根拠になり機能している。最近の研究で、国家賠償請求権(17条)や刑事補償請求権(40条)も、鈴木義男の提案によって追加された。これによって国家が個人に被害を与えたことへの賠償や、えん罪などによる賠償も行われるようになった。国家や行政や裁判が侵す人権侵害への補償を銘記させているのである。
又、三権分立の確立をめざして最高裁判所長官の任命を、総理大臣と同等に天皇任命と6条の加えられている。鈴木義男は、「裁判は政治権力から超然とした存在でなければならない」と述べている。自らの息のかかった人物を最高裁長官に任命するために、違法行為であっても強引に人事権を振りかざす安倍晋三に聞かせたいものである。ギッタンが危惧していたことを、安倍晋三が行っているといえる。
日本国憲法は表現が古いのであるが、かつて国家が国民を縛り付けた帝国憲法を教訓とし、平和と人権を強く配慮したもので恒久性の高い理念によって形成されているといえる。