9.11の現場は、グランドゼロと呼ばれている。2本の巨大な貿易ビルの跡地の建設復興を巡って、様々な動きがる。このグランドゼロから僅か150メートル離れたところに、イスラム教の礼拝施設の建設が持ち上がっている。
オバマ大統領とニューヨーク市長は、アメリカは自由の国である。宗教の自由は保障されていると、建設を指示している。行政の長だから建前通りの意見と見る向きもあるが、自由を標榜するアメリカである。それほど問題はないだろうと思っていたが、アメリカ人の反イスラム感情が強く反対している。
アメリカのイスラム教徒は僅か135万人といわれている。人口の0.6%である。しかし90年には53万人であったが、この10年度2.5倍にもなっている。アメリカの85%はキリスト教徒である。9.11以降の反イスラム感情は、単に異教徒というだけでなく、迫害行為も深刻のようである。イスラム教徒たちが襲撃されたり、建物を破壊されたり火をつけられたりしている。
礼拝施設の建設は68%の人が反対しているが、一方では宗教に自由を唱える人たちがいるものの、建設賛成派は29%に止まっている。自由の国を自称するアメリカは本音として、イスラム教を快く思わず宗教的な対立以前の感情論で、建設が危ぶまれている。
これに似た構図が古くあった。黒人問題である。今やアメリカには人種だ別が亡くなったと言って構わないだろう。とりわけオバマの出現で、終止符が打たれたと言ってよいだろう。黒人問題を克服したアメリカではあるが、イスラム教を巡ってアメリカの本音が問われている。