野田首相が内閣改造をした。というより、自民党に問い詰められていた問責大臣などをすげ替えた。自らが党首である、民主党の内部を切り捨てて、野党の言い分を聞こうと、内閣改造までしたのである。
このこと自体が異様である。どう考えてみても筋が通らない。2月ごろ極秘会談した、元財務大臣同士の増税への意思確認が生かされたことになる。多数がほしいために、野党の言いなりになる。これは異様である。
この内閣でさらに大きな問題なのは、防衛大臣になった森本敏である。この男はれっきとした軍人である。防衛大学を卒業し、長年自衛隊員として勤めた人間である。
憲法66条では、「国務大臣は、文民でなければならない」と規定されている。退職して時間が経っているから、文民であるというのは当たらない。
第一森本は、自ら防衛省に通じていると自認している。多くの発言もしている。とりわけ集団的自衛権は行使すべきであり、そのためには憲法改正までしなければならない、とまで発言している。安倍、麻生内閣で、防衛庁の防衛指揮者として重要なポストを任されてもいた。自民党のタカ派よりも、突っ込んだ発言を繰り返している。
さらに野田の森本指名の理由に、安全保障に精通していることを挙げている。民主党は、安全保障について明確な視点を示していない。自民党が最も突くところである。
つまり野田は、森本の安全保障思想(対米追従路線である)に賛同するというのである。党内論議はなされていない。
さらに、防衛長官も含め大臣に民間からの登用は、森本が初めてである。政策的には森本を突っ込めない自民党であっても、民間人登用は問題視するであろう。国防の要に民間人を置く鈍感さを突くことになる。
何はともあれ、国務大臣に森本を選んだことは、明確な憲法違反である。