東電が損害賠償手続き書類を、仮払金支払者に12日に一斉に配布した。請求様式が60ページ、説明書類は160ページにもなる。かけるものなら書いてみろ、読める者なら読んでみろ、といった感じである。
そ れでなくても、かなりの問題がある。実被害の算定に重点が置かれていて、放射能汚染によって使用できなくなった、施設や不動産などについての評価ない。中間指針で出されていた内容であるが、住宅などで戻れない人たちのための配慮がないのである。
損害算定の中に、地震と津波の損害を外して計算することになっているが、分離できないことの方が却って多いくらいである。その判断基準は何処にあるのか解らない。
提出した書類の写しが残らないばかりか、極めて重要な個人情報も提出することが義務付けられている。これも東電の嫌味のようなものである。
それより、日本弁護士連合会が作成した簡便な申立書を、原子力損害賠償紛争解決センターに申し込むだけでも、賠償はされるとのことである。
日ごろ書類慣れしていない一般人はもちろんのこと、高齢者には極めて煩雑な書類を書かせようとすること自体が、賠償額を極力抑えようとする意図が感じられる。
東電作成の書類通りに書き込んでしまうと、不満や後日判明するような被害や、追加補償を見直すことが出来なくなるのではないだろうか。
農業者にとっては、放射能被害は単年度の生産に限ることがないばかりか、世代を超えた生産体系に大きく関係してくる。次世代を担う人たちが去って行くことの被害算定などは、相当困難であろうが、現実には極めて大きな問題なのである。
風評被害と言うのがあるなら、担い手被害あるいは後継者の精神的被害も、農業では大きいものがある。
放射能汚染は、一次産業に偏在的に起きる。この膨大な書類を作成したことを見ると、東電はこの辺りまでの補償など考えているとは思えない。