「金融緩和の罠」萱野稔人著、集英社刊760円を読みました。萱野氏が藻谷浩介、河野龍太郎、小野善康の三名と、金融緩和策を対談形式で論じています。
本書は、アベノミクスの第一に矢の経済政策とはなにかを通じて、安倍政権の間違った道を指摘するばかりではなく、日本の現状と選択する道を示しています。
金融緩和によって、円安が生じ株高は計画通りに生じた。その後の政策の弾みになるという説明であるが、デフレ脱却をターゲットにしているアベノミクスは、日本の実態をとらえていない。
デフレになっているのは、三者に多少の違いはあるものの、労働人口に減少がある。現役人口の増加は人口ボーナスと呼び、高齢者が増えることを人口オーナスというそうです。
団塊の世代が人口ボーナスは経済成長を担い、今また人口オーナスとなって生産形態だけではなく、消費動向にも大きな役割を担ってきた。
この大きな物理的現象が生んだ高度成長というインフレの再来を、アベノミクスは目指している。高齢者社会に、生産強要とも労働強要とも取れる成熟社会を無視した政策と言える。
小野氏は、貨幣供給によるインフレは1990年ごろまでで、それ以後にはいくらお札を刷ってもインフレは起きない。河野氏は、労働人口が頂点に達した直後に、なぜかバブルが起きている。これは世界中ほとんどの国で起きていると説明する。
いずれにしても、金融政策などの経済政策とは無縁の、経済動向である。政治家は国民に不利な政策を打ち出せない。社会保障への出資もそうであるが、高齢富裕層が貯め込んでいる、資産の放出をするべきというのである。ヒトは労働して金を得て、これを貯め込むという実態を政治は理解していない。
興味深いのは、高木氏が指摘する公共投資によって投資以上の効果や、相乗効果など起きたためしはないというのである。投資以上の経済活動は起きえないというのである。
いずれにしても、デフレを悪と決めつけインフレにしようと躍起であるが、小手先に金融政策では、富裕層にお金が流れるだけである。日銀は刷ったお金で国債を買いこんで、さも金融緩和政策が成功したかに装負っているだけなのである。