トランプの身勝手な外交が留まるところがない。今回のイラン核合意からの離脱、そして経済制裁の発動は最早異常行動ともいえる。単にイランへの経済制裁にとどまらないからである。イラン核合意のメンバーの主要EU諸国にロシアと中国を敵に回すからである。トランプはかつてない経済制裁と述べている。それは同時にこれらの国々との経済交流、流通、貿易を不均衡ににもなるからである。ましてや中東の大国、イランがアメリカにひれ伏すとでも思っているのであろうか。イスラエルはイランに打撃を与えたいのであろうが、全く逆の結果になる。政情は不安定になり、更なる対立を煽ることになる。
トランプの行動はイスラエルの首都容認に発するところがあるが、これはアメリカ国内の親イスラエル、福音派へのプレゼントである。
一連のトランプの政策はアメリカ国内の支持層への熱いメッセージと言えるものである。これは政治ではない。ましてや外交などと呼べる代物でもない。アメリカファーストでもなければ、アメリアオンリーでもない。トランプオンリーの自己保全への布石である。
トランプはどんな悪政を行っても、この支持層は失うことがない。30%と言われる福音派の人たちは、たとえ貿易不均衡が生じても不利な条件を課せられても、彼らはトランプを支持し続ける。個々の外交では、トランプは全戦全敗である。
トランプによってアメリカはかつての武力による外交ではなく、短絡的な貿易収支を評価の基準にしている。トランプが自らが経済的にのし上がってきた時期、30年ほど前の概念での評価を基準にしている。工場の国内移転や東南アジアへの移転は、古い概念での評価は危険である。貿易収支が赤字でも、国内的には潤う形態はいくらでもある。
かつて殴ったら手の方が骨折したなどという子供の例があった。経済制裁は一時的な国内需要の喚起にはなるとは思えるが、これまで培ってきた経済形態をいずれ呼び戻さなければならなくなる。
パリ条約を離脱し、国連人権委員会を脱退し、国連の負担金を極端に減らしても、トランプには理念などなく30%の支持のための政策に勤しむ。