石垣の出自の中にいる私について
石だった日、
水は音をたてずに割れた。
石だった日、
胡桃が落ちた。音をたてた。
石だった日、
真上に太陽があった。
石だった日、
ひとがやってきた。
石だった日、
太い縄が巻かれた。
石だった日、
丸太があてがわれた。
石だった日、
上へひきあげられ、
石だった日、
横へひっぱられた。
石だった日、
水の音がしみこんだ。
石だった日、
縄と丸太から自由になった。
石だった日、
知らない石がぶつかってきた。
石だった日、
知らない石がのっかってきた。
石でなくなった日、
犬が吠えた。
石でなくなった日、
鳥の影が冷たかった。
石でなくなった日、
痛くはなかった。
石でなくなった日、
風が吹いた。
通りすぎてから
ごつごつを思い出している。
石だった日を
かわりに思い出すように。
石だった日、
子どもがやってきた。
やわらかな手を残していった。
石ではなくなった日、
残っている手を見つけたこども。
目をまるくした。
沢をのぼっていくと、
足がすべるところがある。
手が
大きなものにたよって
石だった日がよみがえる。
あの日。
石だった日、
胡桃が落ちてきた。
石だった日、
水といっしょに音楽になった。
石だった日、
真上に太陽があった。
*
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ご要望があれば、署名(宛名含む)もします。
「リッツオス詩選集」も4200円(税抜、送料無料)で販売します。
2冊セットの場合は6000円(税抜、送料無料)になります。
石だった日、
水は音をたてずに割れた。
石だった日、
胡桃が落ちた。音をたてた。
石だった日、
真上に太陽があった。
石だった日、
ひとがやってきた。
石だった日、
太い縄が巻かれた。
石だった日、
丸太があてがわれた。
石だった日、
上へひきあげられ、
石だった日、
横へひっぱられた。
石だった日、
水の音がしみこんだ。
石だった日、
縄と丸太から自由になった。
石だった日、
知らない石がぶつかってきた。
石だった日、
知らない石がのっかってきた。
石でなくなった日、
犬が吠えた。
石でなくなった日、
鳥の影が冷たかった。
石でなくなった日、
痛くはなかった。
石でなくなった日、
風が吹いた。
通りすぎてから
ごつごつを思い出している。
石だった日を
かわりに思い出すように。
石だった日、
子どもがやってきた。
やわらかな手を残していった。
石ではなくなった日、
残っている手を見つけたこども。
目をまるくした。
沢をのぼっていくと、
足がすべるところがある。
手が
大きなものにたよって
石だった日がよみがえる。
あの日。
石だった日、
胡桃が落ちてきた。
石だった日、
水といっしょに音楽になった。
石だった日、
真上に太陽があった。
*
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思潮社 |
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リッツォス詩選集――附:谷内修三「中井久夫の訳詩を読む」 | |
ヤニス・リッツォス | |
作品社 |
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2冊セットの場合は6000円(税抜、送料無料)になります。