詩はどこにあるか(谷内修三の読書日記)

日々、読んだ本の感想。ときには映画の感想も。

高橋睦郎『深きより』(26)

2021-01-01 12:31:59 | 高橋睦郎『深きより』


高橋睦郎『深きより』(26)(思潮社、2020年10月31日発行)

 「二十六 語らず歌へ」は「蕪村」。

思ひ出す 毛馬の堤は いつにても春の日永
その上を駈けつ転びつ 日ねもす遊ぶ幼い日日

 「思ひ出す」と「いつにても」が強く結びついている。これは、高橋が、やはりいつも故郷(生誕の地)を思い出しているからだろうか。「日永」と「日ねもす」が「一日」をを永遠に帰る。その「永遠」は一日ではなく「日日」となってつづく。

水の上には上り下りの川船 陸には行き来の客
中に藪入り里帰りの嬢あり 浪華振りの化粧衣裳
年嵩の悪太郎に唆されて囃したこと 忘れもやらぬ

 「思ひ出す」はもう一度「忘れもやらぬ」と言い直される。
 この書き出しの五行は、非常に音楽的だ。情景が見えるというよりも、幼い日々のこころの伸びやかなリズムが聴こえる。
 高橋も、やはり里帰りのだれかを囃したことがあったのか、と想像させる。同時に、年上の女性への、不思議な視線も感じられる。故郷と年上の女性とが緊密に結びついているところに、蕪村の、ではなく、高橋の人生が反映されているのだろうか。

父母は知らず まことに私を知る友垣なら はるか後世
明治の子規居士 大正の朔太郎ぬし つづく誰彼

 「つづく誰彼」に高橋が入るのだろう。もし、「蕪村」を高橋に置き換えるとき、では子規や朔太郎はだれになるだろうか。高橋は三島由紀夫を思い描いているかもしれない。



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2021年01月01日(金曜日)

2021-01-01 11:37:23 | 考える日記
 プラトンの『ソクラテスの弁明』を読む。(岩波書店、「プラトン全集1」、1986年06月09日、第三刷発行)
 私が「指針」としていることばがいくつもある。

①それはありあわせの言葉でもって、むぞうさに語られることになるでしょう。

 「借りてきたことば」(流通している「現代思想用語」)をつかわない。

②ひとつずつしらべてみることにしましょう。

 「調べる」とは「ありあわせの言葉(自分がふだんつかっていることば)」で言い直してみること。

③たましい(いのちそのもの)を、できるだけすぐれたよいものにするように、

 私は「魂」の存在を信じていない。ソクラテスは「たましい」を「いのちそのもの」と言い直している。私は、この定義ならば、なっとくできる。「いきていること」を「いきてあること」を、できるだけすぐれたよいものにしたい、と私は望んでいる。
 そのために、読む。

④一人一人に接触して、徳に留意せよと説いてきた

 「徳」については、考えない。「一人一人に接触して」は大事。
 私は詩の感想を書き綴っているが、それはそのつど「ひとり」を相手に向き合っている。ただ、そこに「ひとり」の人間がいきてあることを感じて、それについて私がどう感じたかを書く。
 「接触して」というもの大事だ。「接触」というのは、瞬間的なものである。そのときそのときによって、「接触」する部分が違う。私の状態も一定ではない。
 「ひとりひとりに、そのとき接触して」
 ソクラテスは、これを「各人に個人的につくす」、あるいは「一人一人をつかまえて」と言い直している。
 他の人といっしょにしない。

⑤私人としてあることが必要

 これは①に通じる。「私」の「ありあわせの言葉」で「むぞうさ」に、いきる。公、共通、流通の拒否。
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