失踪人捜査課の室長と連絡が取れなくなった。
所内の査察までもう時間がない。
居なくなったのには何か特別の理由があると考えたチーム員達は仕事の基本である「ホウレンソウ」を封印し、自分たちで自分たちのリーダーを救おうとする。
リーダーが自分たちの助けを望まないかもしれないと思いながらも、自分たちの上長を守るべく、動き出すチーム員。
失踪人捜査課シリーズの5作目。
「警察官であること、子の親であることがどんな風に関係しあうのか?」というテーマは、先日読んだ著者の作品「棘の街」とずいぶん被っているテーマなのではないだろうか?
シリーズ物のこちらは、自分たちの職場の歴史と重ね合わせつつ、上長の救出を願うチーム員の苦悩にも大きい比重がかけられているが、人の親としての責任感も大きなテーマだと思う。親としての責任感が直接描かれる棘の街とは違い、こちらは上長の行動を通じて、親としての思いと職業人としての葛藤が炙り出される。
ワンクッションあるだけで逆に冷静に考えられるし、物語としてはこちらの方が面白いのではないだろうか。
棘の街は、「警官である続けることがそんなに素晴らしいことなのか?」というところに共感できなかったのだが、この作品は警官であり続けることイコール女性として職業を持ち続けることの難しさと戦うことでもある。
その難しさは、警察という職場環境を除いても共感できることであるので、より面白く感じられたのかもしれない。
シリーズ物5作目というのは、シリーズとしての歴史も感じられ、かといってマンネリにならない一番いい頃合いなんではないかと思う。
私は結構面白く読む。