この地すなわち東欧平原に居住したユダヤ人(現在多くはイスラエル、アメリカ合州国に移住しユダヤ人世界では多数派)は3系統あります。第1はアシュケナージと呼ばれる人たちでイディシュ語を話す人たちです。ユダヤ人の多数派です。第2は1492年にスペインを追放されたセファルディウムです。第3は7世紀~10世紀にかけて繁栄したトルコ系遊牧民国家、ハザール汗国の末裔です。ハザールのユダヤ教化について以前は上層部だけであったとされていましたが近年一般民衆にまで浸透していたと考えらえてきています。そしてこのブログで2009年7月1日に紹介したようにハザールの末裔=アシュケナージという説が近年有力になりつつあります。ヘブライ大学の教授でユダヤ人シュロモー・サンドの著書「ユダヤ人の起源」はイスラエルでベストセラーになり2010年に邦訳されましたが、そこでも「ハザールの末裔=アシュケナージ」説が主張されています。(もちろん学説としては反対意見もあります)もしこの説が正しいとされると、パレスチナの地を祖地とするイスラエル建国の理念シオニズムは破たんします。しかし強姦されて生まれた子にも生きる権利があるとサンドは述べています。
ウクライナもロシアも自国を9世紀に成立し13世紀に滅んだルーシ公国の直接の後継者と主張していますが、山川出版の世界各国史シリーズ「ポーランド・ウクライナ・バルト史」(p100)によるとそのルーシ公国はノルマン人が南下したルーシ商人団とハザールの一族で建国されたとしています。またキエフと言う名前もハザールの将軍クイkyの砦からきていると記述しています。
このように今回の訪問地は古くからユダヤ人とかかわりの深いにもかかわらず日本で一番売れているガイドブック「地球の歩き方」にもそのことにつての記述もなく今回のツアーコースに入っていないのであえてこの「ベラルーシ・ウクライナ・モルドヴァ」編で最初に取り上げることにしました。なお、この地出身の著名なユダヤ人の名前は数が多いので省略します。
写真は最初に取り上げたキエフのシナゴーグの標識です。キエフユダヤ人共同体センターと書かれていますね。