お金がなく、ケチで、外国語がダメで、体に少し障害があり、年寄りで、そのうえ稀代の方向音痴の私にとって外国旅行はパックツァーでしかありません。パックツアーの最大の欠点は決められたところを現地ガイドの説明(日本語のガイドでない場合は添乗員の日本語訳で)を受け多人数の時は質問もできなく時間に縛られて急いで次の観光場所へ移動の繰り返しでその土地の人との「出会い・ふれ合い」はほとんどないことです。その数少ない貴重な「出会い・ふれあい」のいくつかを以下紹介します。
ルーマニアにはブルガリアからドナウ河国境を越えたのですが、入管事務所の役人の威張った態度に一同憤慨してこの先の旅に不安を覚えました。当日ブルガリアからルーマニア入国までの現地美人ガイド、テオドラさんが念入りにお化粧した意味はこれにあったようです。(考えてください)
ところが入国してみてルーマニア人の温かいもてなしには感激しました。ビカズという町のガソリンスタンドでトイレ休憩の時でした。私は用がなかったので向かい側で果樹園の手入れをしている母子の写真を無断で撮影しました(冒頭写真)。それを感知した息子さん(30歳くらい)がこちらに向かって来ました。てっきり叱られるものと思っていたら手招きして中に入れといっているようでした。家の中まで案内されブドウとクルミをご馳走になりました。お母さんはデカンターにワインを入れて持ってこようとしていました。その間、トイレを済ました同行の人たちは私のいないのに気づき騒ぎになっていました。探し出されてバスに戻りました。そのときお母さんはたくさんのブドウを持たせてくれました。
皆さんにお詫びを言いながらそのブドウを配りました。そのとき名古屋の人に「トイレ休憩はトイレ休憩だけにしてチョ」と叱られたのも想い出の一つです。 いまどき見知らぬ人、それも外国人を家の中まで案内し、ワインまでご馳走しようとする人がこの地球上に存在していたことに感激でした。
自由時間にキオスクみたいなところでビールを求めそこのテーブルで一人飲んでいました。そこのテーブルは空きが沢山あったにもかかわらず若い男女がわたくしのテーブルに向かい合って座りました。彼らは私がつまみなしにビールを飲んでいるのを見て彼らのつまみを勧めてくれました。何でもないようですが旅人の私には寂寥感もあったので大感激でした。写真がないのが残念。