モスクワの街を、観光バスで走っていると、丁度新宿のような、一群の近代的な高層ビル群が、時々、車窓から見え隠れする。
実際には、この場所には行ってはいないが、ロシア経済なり、ロシアの今後について、大変重要な示唆を与えているように思えるので、後追いの情報知識を含めて考えてみたいと思う。
この高層ビル群は、「モスクワ・シティ」と称されるモスクワ最大の近代的都市開発プロジェクトである。
インターネットで得た現状の写真なり完成図は、次のとおりである。
この開発プロジェクトは、クレムリンの西方の旧工業地帯であったモスクワ川北岸に計画されて実施され、進行中ながら現在中断されているのだが、サンクトペテルブルグでもモスクワでも、私が旅行中にバス等で走って見た限りでは、近代的な建物群が存在するのは、これ以外にはなかった。
単発のかなり大規模の中高層のアパート建設は散見されたが、BRIC'sと騒がれ急成長を遂げていた筈のロシアの二大都市で、不思議にも、現在進行中、ないし、最近開発済みの近代的な建物群は殆ど見当たらないと言うことは、ロシアの近代化が、どこかで止まっているのではないかと言うことであろうか。
取りあえず、ウイキペディアを引用すると、
”モスクワ・シティは、ロシア及び東欧において最初の大規模商業・業務・住宅・娯楽コンプレックスの建設が目標である。いわば「都市の中に都市を作る」ともいうべきこの計画は、1992年モスクワ市政府によって企画・立案された。
開発地区の総面積は約1平方キロメートルで、計画から15年経った現在でも多くの工場やコンビナートが立ち並んでいるものの、ゆっくりとではあるが、多くの高層建築の林立する新市街へと変貌を遂げようとしている。”と言うことである。
しかし、ロシアNOWによると、
”2008年の経済危機により、シティ建設に携わっていた建設会社は資金繰りが苦しくなり、建物が一時作業中断を余儀なくされたり、膨大な建設資金が行方不明になったりするケースも出てきた。
118階建てで高さ612mの超高層ビルであり、完成すればヨーロッパでは最高、世界でもドバイのブルジュ・ドバイに次ぎ2番目に高いビルとなると鳴り物いりで喧伝されて着工された「ロシア・タワー」建設は、とりあえず2016年まで凍結されている。”のである。
「モスクワを世界の金融センターの一つにする」ことを目指して計画されたモスクワ国際ビジネスセンターの象徴であった超高層ビル「ロシア・タワー」が頓挫し、これに次ぐ高さの「フェデレーション・タワー」を建設中の会社も怪しくなったと伝えられており、象徴を欠いた形のこのモスクワ・シティ開発プロジェクトが、どのように進行するのか、予断を許さない状態になっている。
計画では、全体の完成は2020年を予定していると言うことだが、ロシア経済は金融危機と原油価格の急落で失速し、不動産バブルの崩壊に伴いオフィス需要が減少、投資先に資金の拠出を拒否されるなどして、資金繰りに行き詰まり、 建設工事を続行できなくなっている現状に加えて、
今回、更に、石油価格の大幅下落と欧米のウクライナ制裁によってルーブルの大暴落によって、ロシア経済が最大の危機に突入してしまった以上、お先真っ暗と言う以外に言いようがなくなってしまった。
プーチン大統領でさえ、今回の経済危機からの回復には2年はかかると国民に耐乏生活を乞わざるを得なかったと言う状態である。
モスクワNOWは、「大株主はエリツィン・ファミリー」として、
”モスクワ市政府も参加する資産運用公開株式会社「シティ」が創設され、インフラの保障、「セントラル・コア」の建造、摩天楼の建設用地の販売を手掛けてきた。同社の株は、元大統領府長官ワレンチン・ユマシェフ氏が 49 ・ 58 %、その娘婿である「ロシア・アルミニウム(ルサル)」社社長オレグ・デリパスカ氏が 34 ・ 34 %保有している。”と述べている。
前述の建設会社の経営悪化とどう言う関係にあるのかは不明だし、この「シティ」と言う組織が、どのような権能なり役割を持っているのかも分からないので、何とも言えないが、この中核となる会社が、政府主導ならともかく、民間組織(?)が、株の圧倒的部分を保有しているとすると、恐らく、資金繰り等財政面で、暗礁に乗り上げるのではないかと思う。
政権上層部や利害関係者等の利権が絡んで、先のオリンピックの総コストが何倍にも膨れ上がったと言うお国柄であるから、先行きは不透明と言うべきであろうか。
私が、疑問に思ったのは、このプロジェクトの推移と言うよりも、ロシアの国家としての発展なり近代化、経済成長が、疎かにされて来たのではないかと言うことである。
前述したように、サンクトペテルブルグもモスクワも、あの近代的な高層ビルが林立して活況を呈している中国や東南アジア諸国の大都市と比べて、殆ど変らず、正に、世界遺産の様相を呈していると言う不思議である。
急カーブで高騰する石油と天然ガスによって稼ぎ出した膨大な外貨を、無尽蔵だと思われるほど大盤振る舞いをしてバブル成長を謳歌し、また、BRIC'sと騒がれて世界の注目を集めて、一等国に上り詰めたと思った瞬間の世界的金融危機で急転直下。
1998年のロシア危機では、殆ど国家経済崩壊の危機に直面しながらも、2005年にロンドンに行った時には、街に、ロシア人が溢れて、高級不動産が飛ぶように売れ、毎夜の如く超高級ホテルでは、ロシア関係の大宴会が催されていると言った状態で、飛ぶ鳥落とす勢いであったが、これもあれも、総て、石油と天然ガスのお蔭。
イソップのアリとキリギリスの話や、仏教説話の「雪山の寒苦鳥」を思い出した。
潤沢な天然資源の輸出によって国家が繁栄して製造業が成長発展せずに衰退して行くと言う「オランダ病」と言うべきか。
いまだに、世界に冠たる先進的な工業力の萌芽さえ見えず、近代的な都市開発さえ殆ど行われおらず(?)、その虎の子の「モスクワ・シティ」さえ、財政危機で暗礁に乗り上げていると言う現状をどう見るのか。
BRIC'sとは、一体何だったのか。
これまでに、ロシア経済について、このブログで何度か触れたが、今現在、現実のロシア経済をよく理解しないままに、この文章を書いているので、少し、真剣に、ロシアの政治経済社会などを勉強しなければならないと思っている。
(追記)この写真は、モスクワ大学のある丘から、プロジェクトを遠望したものだが、右方の赤っぽいロシア・タワーが、工事途中であることが分かる。
実際には、この場所には行ってはいないが、ロシア経済なり、ロシアの今後について、大変重要な示唆を与えているように思えるので、後追いの情報知識を含めて考えてみたいと思う。
この高層ビル群は、「モスクワ・シティ」と称されるモスクワ最大の近代的都市開発プロジェクトである。
インターネットで得た現状の写真なり完成図は、次のとおりである。
この開発プロジェクトは、クレムリンの西方の旧工業地帯であったモスクワ川北岸に計画されて実施され、進行中ながら現在中断されているのだが、サンクトペテルブルグでもモスクワでも、私が旅行中にバス等で走って見た限りでは、近代的な建物群が存在するのは、これ以外にはなかった。
単発のかなり大規模の中高層のアパート建設は散見されたが、BRIC'sと騒がれ急成長を遂げていた筈のロシアの二大都市で、不思議にも、現在進行中、ないし、最近開発済みの近代的な建物群は殆ど見当たらないと言うことは、ロシアの近代化が、どこかで止まっているのではないかと言うことであろうか。
取りあえず、ウイキペディアを引用すると、
”モスクワ・シティは、ロシア及び東欧において最初の大規模商業・業務・住宅・娯楽コンプレックスの建設が目標である。いわば「都市の中に都市を作る」ともいうべきこの計画は、1992年モスクワ市政府によって企画・立案された。
開発地区の総面積は約1平方キロメートルで、計画から15年経った現在でも多くの工場やコンビナートが立ち並んでいるものの、ゆっくりとではあるが、多くの高層建築の林立する新市街へと変貌を遂げようとしている。”と言うことである。
しかし、ロシアNOWによると、
”2008年の経済危機により、シティ建設に携わっていた建設会社は資金繰りが苦しくなり、建物が一時作業中断を余儀なくされたり、膨大な建設資金が行方不明になったりするケースも出てきた。
118階建てで高さ612mの超高層ビルであり、完成すればヨーロッパでは最高、世界でもドバイのブルジュ・ドバイに次ぎ2番目に高いビルとなると鳴り物いりで喧伝されて着工された「ロシア・タワー」建設は、とりあえず2016年まで凍結されている。”のである。
「モスクワを世界の金融センターの一つにする」ことを目指して計画されたモスクワ国際ビジネスセンターの象徴であった超高層ビル「ロシア・タワー」が頓挫し、これに次ぐ高さの「フェデレーション・タワー」を建設中の会社も怪しくなったと伝えられており、象徴を欠いた形のこのモスクワ・シティ開発プロジェクトが、どのように進行するのか、予断を許さない状態になっている。
計画では、全体の完成は2020年を予定していると言うことだが、ロシア経済は金融危機と原油価格の急落で失速し、不動産バブルの崩壊に伴いオフィス需要が減少、投資先に資金の拠出を拒否されるなどして、資金繰りに行き詰まり、 建設工事を続行できなくなっている現状に加えて、
今回、更に、石油価格の大幅下落と欧米のウクライナ制裁によってルーブルの大暴落によって、ロシア経済が最大の危機に突入してしまった以上、お先真っ暗と言う以外に言いようがなくなってしまった。
プーチン大統領でさえ、今回の経済危機からの回復には2年はかかると国民に耐乏生活を乞わざるを得なかったと言う状態である。
モスクワNOWは、「大株主はエリツィン・ファミリー」として、
”モスクワ市政府も参加する資産運用公開株式会社「シティ」が創設され、インフラの保障、「セントラル・コア」の建造、摩天楼の建設用地の販売を手掛けてきた。同社の株は、元大統領府長官ワレンチン・ユマシェフ氏が 49 ・ 58 %、その娘婿である「ロシア・アルミニウム(ルサル)」社社長オレグ・デリパスカ氏が 34 ・ 34 %保有している。”と述べている。
前述の建設会社の経営悪化とどう言う関係にあるのかは不明だし、この「シティ」と言う組織が、どのような権能なり役割を持っているのかも分からないので、何とも言えないが、この中核となる会社が、政府主導ならともかく、民間組織(?)が、株の圧倒的部分を保有しているとすると、恐らく、資金繰り等財政面で、暗礁に乗り上げるのではないかと思う。
政権上層部や利害関係者等の利権が絡んで、先のオリンピックの総コストが何倍にも膨れ上がったと言うお国柄であるから、先行きは不透明と言うべきであろうか。
私が、疑問に思ったのは、このプロジェクトの推移と言うよりも、ロシアの国家としての発展なり近代化、経済成長が、疎かにされて来たのではないかと言うことである。
前述したように、サンクトペテルブルグもモスクワも、あの近代的な高層ビルが林立して活況を呈している中国や東南アジア諸国の大都市と比べて、殆ど変らず、正に、世界遺産の様相を呈していると言う不思議である。
急カーブで高騰する石油と天然ガスによって稼ぎ出した膨大な外貨を、無尽蔵だと思われるほど大盤振る舞いをしてバブル成長を謳歌し、また、BRIC'sと騒がれて世界の注目を集めて、一等国に上り詰めたと思った瞬間の世界的金融危機で急転直下。
1998年のロシア危機では、殆ど国家経済崩壊の危機に直面しながらも、2005年にロンドンに行った時には、街に、ロシア人が溢れて、高級不動産が飛ぶように売れ、毎夜の如く超高級ホテルでは、ロシア関係の大宴会が催されていると言った状態で、飛ぶ鳥落とす勢いであったが、これもあれも、総て、石油と天然ガスのお蔭。
イソップのアリとキリギリスの話や、仏教説話の「雪山の寒苦鳥」を思い出した。
潤沢な天然資源の輸出によって国家が繁栄して製造業が成長発展せずに衰退して行くと言う「オランダ病」と言うべきか。
いまだに、世界に冠たる先進的な工業力の萌芽さえ見えず、近代的な都市開発さえ殆ど行われおらず(?)、その虎の子の「モスクワ・シティ」さえ、財政危機で暗礁に乗り上げていると言う現状をどう見るのか。
BRIC'sとは、一体何だったのか。
これまでに、ロシア経済について、このブログで何度か触れたが、今現在、現実のロシア経済をよく理解しないままに、この文章を書いているので、少し、真剣に、ロシアの政治経済社会などを勉強しなければならないと思っている。
(追記)この写真は、モスクワ大学のある丘から、プロジェクトを遠望したものだが、右方の赤っぽいロシア・タワーが、工事途中であることが分かる。