熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

鎌倉国宝館・・・肉筆浮世絵の美

2016年01月22日 | 鎌倉・湘南日記
   元旦から、鶴岡八幡宮の隣の鎌倉国宝館で、「氏家浮世絵コレクション」の肉筆浮世絵展が、開かれているので、興味を感じて出かけた。

   氏家浮世絵コレクションは、浮世絵の優品の海外への流出を憂えた、肉筆浮世絵の蒐集家の故・氏家武雄氏と鎌倉市とが協力し、鎌倉国宝館内に設置した財団法人であるとか。
   肉筆浮世絵は、版画と違って、細やかな筆使いや微妙な色彩を駆使して描かれ、その美しさとともに画家本来の技量を知る貴重な資料でもあり、海外でも人気が高い。
   ロンドンで、激しい春画なども含めた浮世絵展を見たことがあり、この時から興味を持ち、ボストン美術館の収集作品の展示などに出かけたりしている。
   明治維新以降の混乱期から、膨大な日本絵画などの日本美術の名品が流出しており、惜しい限りだが、維持管理すべき能力がなかったのであるから、パルテノン神殿の破風彫刻のように、世界のどこかで、しっかり管理展示されておれば、良しとすべきなのであろう。

   「浮世」とは「現代風」という意味であるから、当時の風俗を描く風俗画と言うことであるが、とにかく、物凄く種類が多岐であり、日本人の芸術感覚の凄さを実感する。
   当初の肉筆画は希少価値だが、版画になってからは、庶民の愛玩用となって広く広がり、富山の薬売りが、土産に持って地方を行脚して、江戸の風俗や流行など最新情報を伝えて顧客サービスにこれ務めたと言う。
   また、浮世絵については、国立劇場で、隣接する「伝統芸能情報館」や劇場の展示室などで、役者絵や芝居絵などを見る機会が多いので、興味を持って見ており、古典芸能鑑賞の役に立っている。
   
  今回の展示は、鎌倉国宝館によると、
   ”葛飾北斎の作品を中心に、菱川師宣、懐月堂安度、宮川長春、月岡雪鼎、喜多川歌麿、歌川広重らの肉筆浮世絵の名品約を一堂に展観するものです。浮世絵の草創期から幕末に至るまでの各時代の作品を網羅し、さらにそれぞれの浮世絵師たちの代表的な肉筆作品を取りそろえる同コレクションは、江戸時代に花開いた浮世絵の展開を跡付ける上でも重要な意義を持っています。と言うことである。
   この国宝館の展示室は、ワンフロワーで、半分が重要文化財などの「鎌倉の仏像」常設展示場で、その半分の絵画などの常設展示に加えて、今回の浮世絵展示がなされているので、それほど広くなくて、37点の肉筆浮世絵の出展である。
   ポスターなどに使用されている絵は、菱川宗理の「娘に猿図」。
   猿に着物の裾を引っ張られて、見返り美人のように振り返る娘姿であるが、非常に地味な格好で、顔の表情が可愛いので、娘に見えると言うところであろうか。
   

   国宝館のHPから借用して作品の一部を表示すると、順に、葛飾北斎「桜に鷲図」、菱川師宣「桜下遊女と禿図」、月岡雪鼎「しだれ桜三美人図」、歌川広重「高輪の月図」
   
   
   
   

   葛飾北斎の作品は、ほかに、素晴らしい雪中張飛図や、とぼけた調子の「蛸図」など、一寸違った雰囲気の浮世絵があって興味深かった。
   美人画なども掛け軸を意図した絵画が多いので、絵が縦長で広がりに欠けるのだが、奥村政信の「当世遊色絵巻」などの絵巻は、物語性があって、面白かった。

   北斎については、ロンドンにいた時に、大英博物館の日本室の増改修工事に携わったことがあり、その後で、富嶽三十六景の全図の特別展が開かれて鑑賞して、感激した思い出がある。
   歌舞伎関係の浮世絵展示も、ここで見たのだが、外国で見る日本芸術の良さは、望郷の思いも重なって、特別な感慨を覚える。

   仏像の方は、これまでに見ているので、また、お会いしましたねえ、と言う感じであったが、先のポスターの右上に表示されている
   八幡宮の弁財天坐像と、修理して奇麗になった養命寺の薬師如来坐像は、特別展示であった。
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