
還暦を迎えるドミンゴを祝う為に、ヘレナ・マテオプーロスが、多忙を極めるドミンゴを世界各地に追っかけて素晴らしい本”PLASIDO DOMINGO My Operatic Roles プラシド・ドミンゴ オペラ62役を語る”を著した。
既に5年前に出版されている本だが、ドミンゴが、オペラで演じた夫々の役柄を丁寧に語っており、ヘレナが他の大オペラ歌手等のインタービューを交えながら興味深い逸話や解説を加えている。
ドミンゴが語る夫々の役柄の難しさやその芸術の奥深さ、相手役のヒロイン歌手に合わせて歌唱を変えたり、何百回も歌っていてどのように変わってきたか等など、興味深い話題が随所に現れ、如何にドミンゴが豊かな知性と教養に裏打ちされた大歌手であるのか、その片鱗が伺われて実に楽しい。
残念ながら、私のドミンゴ鑑賞は限られており、ロンドンのロイヤル・オペラで、「トスカ」、「サムソンとデリラ」と「オテロ」、そして、ドミンゴが振った「パリアッチ」、メトロポリタン・オペラで、「ワルキューレ」の5オペラだけであるが、それでも、その類まれな美声と芸術の素晴らしさは分かっているつもりである。
3大テノールのパバロッティやホセ・カレーラス、そして、アラーニアやホセ・クーラ等のオペラも結構見ているが、ワーグナーまで手を出す芸域の広さと芸の深さは他の追随を許さないであろう。
マリオ・デル・モナコやジュゼッペ・ステファノも素晴らしかったが、やはり、イタリアの歌手であった。
ニューヨークのメットの「ワルキューレ」のチケットが簡単に取れたのにはビックリしたが、当時は、ロンドンではロイヤル・オペラでドミンゴやパバロッティのチケットを取るのはフレンドか何か特別な関わりがなければ至難の業であった。
それに、当時の交換レートで、最高席は6~7万円していたので、現在の日本での引越し公演と変わらないほど高かった。(今は、改装後、良くなってかつ安くなっている。)
私が一番感激したドミンゴの舞台は、ショルティが振り、キリ・テ・カナワがデズデモーナを、ライフェルクスがイヤーゴを歌った「オテロ」、である。
そのころ、ロイヤル・シェイクスピア・カンパニーのシェイクスピア戯曲の舞台鑑賞に入れあげていたので、ドミンゴのオテロに、オペラ歌手としてのみならず役者としての素晴らしい芸の深さに感嘆してしまった。
ドミンゴが、オテロを30年前に初演する時、皆が反対したが、ビルギット・ニルソンだけが、ドン・ロドリゴを歌うドミンゴを聴いてオテロの第一人者になると予言したという。
ニルソンのイゾルデを大阪フェスティバルで聴いているが、あのワーグナー歌いの大歌手ニルソンが認めたとは、そして、初演がカレーラスの恋人リッチャレッリのデズデモーナであった事、そして、その後、ウィーン国立歌劇場で101回のカーテンコールを受けたことなど逸話が明かされる。
興味深いのは、ドミンゴのオテロはムーア人というよりはアフリカ人であることをオリビエから学んだこと、ヴェルディのオペラはシェイクスピア劇より進行が早いので激情を爆発させるタイミングは出来るだけ遅らせた方が良いこと、そして、愛の二重唱を終えて永遠に手の届かない最後を迎えるオテロの悲しみ、イヤーゴとの心理劇の葛藤等など実に含蓄の深い持論が展開されていて興味深い。
このような興味深い話が、62のロールで語られていて、ドミンゴの芸術を通してオペラの奥深さが分かる、そんな還暦祝いの本素晴らしい本であった。
既に5年前に出版されている本だが、ドミンゴが、オペラで演じた夫々の役柄を丁寧に語っており、ヘレナが他の大オペラ歌手等のインタービューを交えながら興味深い逸話や解説を加えている。
ドミンゴが語る夫々の役柄の難しさやその芸術の奥深さ、相手役のヒロイン歌手に合わせて歌唱を変えたり、何百回も歌っていてどのように変わってきたか等など、興味深い話題が随所に現れ、如何にドミンゴが豊かな知性と教養に裏打ちされた大歌手であるのか、その片鱗が伺われて実に楽しい。
残念ながら、私のドミンゴ鑑賞は限られており、ロンドンのロイヤル・オペラで、「トスカ」、「サムソンとデリラ」と「オテロ」、そして、ドミンゴが振った「パリアッチ」、メトロポリタン・オペラで、「ワルキューレ」の5オペラだけであるが、それでも、その類まれな美声と芸術の素晴らしさは分かっているつもりである。
3大テノールのパバロッティやホセ・カレーラス、そして、アラーニアやホセ・クーラ等のオペラも結構見ているが、ワーグナーまで手を出す芸域の広さと芸の深さは他の追随を許さないであろう。
マリオ・デル・モナコやジュゼッペ・ステファノも素晴らしかったが、やはり、イタリアの歌手であった。
ニューヨークのメットの「ワルキューレ」のチケットが簡単に取れたのにはビックリしたが、当時は、ロンドンではロイヤル・オペラでドミンゴやパバロッティのチケットを取るのはフレンドか何か特別な関わりがなければ至難の業であった。
それに、当時の交換レートで、最高席は6~7万円していたので、現在の日本での引越し公演と変わらないほど高かった。(今は、改装後、良くなってかつ安くなっている。)
私が一番感激したドミンゴの舞台は、ショルティが振り、キリ・テ・カナワがデズデモーナを、ライフェルクスがイヤーゴを歌った「オテロ」、である。
そのころ、ロイヤル・シェイクスピア・カンパニーのシェイクスピア戯曲の舞台鑑賞に入れあげていたので、ドミンゴのオテロに、オペラ歌手としてのみならず役者としての素晴らしい芸の深さに感嘆してしまった。
ドミンゴが、オテロを30年前に初演する時、皆が反対したが、ビルギット・ニルソンだけが、ドン・ロドリゴを歌うドミンゴを聴いてオテロの第一人者になると予言したという。
ニルソンのイゾルデを大阪フェスティバルで聴いているが、あのワーグナー歌いの大歌手ニルソンが認めたとは、そして、初演がカレーラスの恋人リッチャレッリのデズデモーナであった事、そして、その後、ウィーン国立歌劇場で101回のカーテンコールを受けたことなど逸話が明かされる。
興味深いのは、ドミンゴのオテロはムーア人というよりはアフリカ人であることをオリビエから学んだこと、ヴェルディのオペラはシェイクスピア劇より進行が早いので激情を爆発させるタイミングは出来るだけ遅らせた方が良いこと、そして、愛の二重唱を終えて永遠に手の届かない最後を迎えるオテロの悲しみ、イヤーゴとの心理劇の葛藤等など実に含蓄の深い持論が展開されていて興味深い。
このような興味深い話が、62のロールで語られていて、ドミンゴの芸術を通してオペラの奥深さが分かる、そんな還暦祝いの本素晴らしい本であった。