熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

子供にはお金よりも思い出を?

2012年06月10日 | 生活随想・趣味
   今日、車の中で、NHKのFM放送を聞いていたら、何か昼の音楽の番組だったと思うのだが、2人の男性ナレーターの会話で、子供には、お金などを残しても何の役にも立たないので、思い出を残すべきだと語っていた。
   私よりも若い人たちのようで、どれ程の人生経験があるのかにもよるのだが、思い出と言っても色々だし、どんな思い出を残せと言うのか、車を降りたので聞かずじまいに終わったのだが、如何にも自信ありげに語っていたので、そんなに簡単に大見得を切って良いのかと、一寸、疑問に感じた。

   まず、その前に、お金を残すと言う話だが、私の友人である欧米人を見ている限りにおいては、学校を出すまでくらいは、ある程度面倒を見るが、殆ど、経済的なサポートはしておらず、子供たちは、自活と言うか、その後の人生は自分持ちであり、自分の責任において生活するものだと思っているようである。
   私など、子供たちに、取り立てて残すほどの財産もないので、言う資格もないのだが、大学ないし大学院を出したのであるから、その後は、自分で生活するようにと、娘たちに言って来たつもりである。
   尤も、我々が、まずまずの生活を続けている限りにおいては、家内などは、孫が可愛い所為もあって、何やかやと娘たちのサポートは適当にしているようではあるが、前述した子供たちに金を残して死ぬと言った次元の話ではない。
   いずれにしろ、私もそうだが、日本人は、子供に甘過ぎるので、むしろ、雑草のように強く生きられるように、自分の足で歩くことを教えて育てた方が良いと思っている。

   さて、思い出を残すと言うことだが、どのような思い出を子供たちに残すのであろうか。
   やはり、良い思い出と言うのは、家族と一緒に生活を通じて作り上げて行くことであろうが、これは、言うは易く、実行は非常に難しい。
   大体、父親が外に出て働いている場合には、子供たちと過ごす時間や機会が限られているので、まず、難しくて、休日や休暇を活用する以外に方法がない。
   私の場合にも、単身赴任で別居した期間は、ほんの2年弱くらいだと思うのだが、娘たちが生徒として学校に通っていた頃は、海外関係の仕事が主であったから、海外に住んでいても、年の半分くらいは、家に居なかったし、夜も結構遅かったように思う。

   娘が二人であったので、生活を共にするのは当然なので、海外生活14年間は、一緒に連れて海外生活を送ったので、2人とも、国際感覚や英語に関しては、不自由は全くしていない。
   しかし、全く言葉が分からない状態で、インターナショナル・スクールや現地校に入れたので、大変な苦労はしていたであろうけれど、文句も言わずに学業を終えて、それなりに、貴重な経験を残している。
   長女は、最初は、サンパウロの日本人小で、その後、小学校後半と中学校は日本、高校はオランダのインターナショナル・スクールを出て、大学は、日本に帰って終えており、次女は、実質半分くらいはヨーロッパ生活で、最初は、オランダ現地小、その後、蘭英の日本人学校、中高は日本で、大学と大学院は、英国である。
   娘とは、面と向かって、海外生活が苦痛であったかそれ程でもなかったのか、聞いたこともないので、どう思っているのか分からないが、私には、良い思い出を残したなどと言う気持ちなど全くなくて、むしろ、苦労を掛けたと言う忸怩たる思いの方が強い。

   良いのか悪いのか分からないのだが、やはり、子供たちと一緒に普通とは違った思い出を作ったと言うのは、海外で生活していた時期の方が多いような気がする。
   アメリカ2年、ブラジル4年、ヨーロッパ8年の内、夏休みとクリスマス休暇には、2週間くらいの休みが取れたので、大体、この休みには、家族旅行をしたので、この思い出が、一番印象的かも知れない。
   アメリカに居た時も、ブラジルに居た時も、ヨーロッパへも行ったりしていたので、ヨーロッパ内の旅行は、随分、あっちこっち回っていて、思い出が一番多い。

   私たちは、殆ど団体旅行をせずに、一から私自身で計画を立てて、ホテルは勿論交通機関の予約から、オペラやレストランの予約なども勿論、総て、私が手配して実行して来たので、ミシュランのグリーン本などの英文の旅行資料やクック社の資料など手当たり次第にフル活用したのだが、下手な旅行社のツアーガイドよりは、私の方がはるかに経験と知識は上かも知れないと思っている。
   オランダに居た時には、車で大陸内を走り、イギリスに移ってからは、国内は車で、大陸へは飛行機で飛んで、ユーレイルパスを使って列車旅行に切り替えた。
   旅行社のアレンジする団体旅行と違って、旅にメリハリをつけることが出来るし、自由に旅程を組み替えたりできるので、時間的な無駄もなくなって非常に合理的なのだが、結構、不測の事態が起こったりしてすることもあり、このあたりは、私自身の仕事のリスク管理の一環でもあり、勉強になることも多々あった。

   旅行をしない平生の生活では、休みが取れれば、やはり、海外に居たと言うこともあって、結構、旅行者並みに興味に任せて、あっちこっち出かけて行った。
   大体、私自身の趣味や興味が優先するのだが、芸術鑑賞が主体で、博物館・美術館等へはよく通ったし、コンセルトヘボーやロンドン響、ロイヤル・オペラなどのシーズン・メンバー・チケットを持っていたし、バレーやコンサートなどには、良く連れて行った。
   長女は、サンパウロ・オペラ、次女は、ハイティンク指揮のコンセルトヘボーが最初の音楽鑑賞であったし、コンサートでも、ミシュランの星のあるレストランでも、私の主義で、お子様メニューには、一切関知せず、総て、大人並みに娘たちを遇して来たつもりである。

   さて、この様な海外での生活と経験だが、娘たちは、小学校の頃の思い出などは、大半、忘れてしまっていて、記憶の隅に残っているものは、比較的少なく、膨大な写真を撮っておいたので、それを、見せて思い出を反芻させている。
   当然、その後、自分たちで、出かけて行った旅の思い出の方が、記憶に残っているのだろうと思う。
   私の言いたいのは、先の二人のナレーターの会話だが、子供に良い思い出を残すと言っても、余程、強烈な思い出を残して、それを継続して生かすなり印象付けなければ、忘却の彼方に行ってしまって、何の役にも立たないかも知れないと言うことである。
   
   そう思っているので、一寸早いかなあと思いながらも、我々が元気な間に、孫をヨーロッパに連れて行って、母親が学んだ学校や生活空間を見せたり、我々が生活して経験したヨーロッパの息吹を感じさせようと思って、来年、3月に、中学校に上がる直前に、ロンドンを起点にヨーロッパを一緒に歩こうと思っている。

   しかし、結局、総ては、色々な意味で、親の能力の限界と言うか、それが、とどのつまりはコンストレインになって、正直なところ、親が、子供に良かれと思って、いくら、良い思い出作りをしようと思っても、親の独りよがりであったり、自己満足ではなかったかと思うことの方が多いように感じている。
   二人が語っていたように、子供には、お金を残すよりも良い思い出を残すべきだと、私にも異存はないけれど、結局、自分自身の生き様との勝負でもあるので、それほど簡単なものではないぞと言うのが、私の思いである。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 国立劇場・・・中村橋之助の... | トップ | トマト栽培日記2012~(... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

生活随想・趣味」カテゴリの最新記事