熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

クリントン:トランプ第1回テレビ討論・・・日本の立場

2016年09月27日 | 政治・経済・社会
   今回、アメリカの大統領選挙でのクリントンとトランプ両候補の第1回テレビ討論を、NHK BS1で聞いた。
   大方のアメリカのメディアの報道は、クリントン勝利と言うことで、世論調査の数字も、一気に、クリントン人気がアップした。
   私自身は、必ずしも、クリントンが勝利して大統領に就任しても、アメリカが、格別良くなるとは考えていないし、それ程、期待できるとは思っていないが、トランプの場合の様な不確定要素や混乱は起こらないであろうから無難であろう。
   いずれにしろ、クリントンの勝利を願っている。
   ニューヨーク・タイムズやワシントン・ポストを読んでいると、アンチ・トランプ記事が多いのだが、何故、徒花候補だと言われていたトランプが、共和党の大統領候補に上り詰めたのか、良くも悪くも、アメリカ資本主義の限界を露呈したと言うことであろうか。
   全く関係ない話だが、このトランプは、私のアメリカでの母校ペンシルバニア大学ウォートン・スクールの卒業生で、同窓であり、あのバンス・ホールで授業を受け、あのカフェテリアでコーヒーをすすり、コンピューターセンターで、パンチカードを打っていたと思うと、縁は異なものと言う感じがして不思議である。

   さて、ここで、触れたいのは、ただ一点。
   トランプの日本防衛に対する論点である。
   日経記事を引用させてもらうが、
   ”トランプ氏は「我々は日本やドイツ、韓国などを防衛しているが、彼らは我々に支払いをしていない。公正な負担がなければ、日本を防衛することはできない」と語り、米国の同盟国に対し強硬な主張を繰り返した。
   トランプ氏は「(米国は)世界中の警察になることはできない」と述べた。「同盟国の全てを支援していきたいが何十億ドル、何百億ドルというお金を失っている」と指摘。そのうえで「対価を払わなければ守ることはできない」と語った。”
   かって、トランプは、自国防衛のために、日本や韓国やサウジアラビアは、核武装すべきだと言ったと言うことだが、それを受けて、”クリントン氏は「トランプ氏は核兵器の使用をほのめかしている」と批判、「(軍の最高司令官である大統領として)核ボタンの近くに寄ってはならない」とした。”

   この点に関連して、少し前に、このブログで次のように書いた。
   共和党の大統領候補のトランプが、大統領に就任すれば、日米安全保障条約に基づき米軍が日本防衛のために支出している国防費の全額負担を日本に要求する考えを表明し、全額負担に応じなければ駐留米軍を撤収すると言ったと言うことだが、正直なところ、これが、普通のアメリカ人の一般世論ではないかと思う。
   何の名目も立たずにのめり込んだアフガニスタンとイラクで巨費を浪費して極度に疲弊し、リーマンショックで壊滅的な打撃を受けて、格差社会が行き着くところまで行って経済社会を無茶苦茶にしてしまったのであるから、米国民の多くは、厭戦気分が横溢しており他国のことなど構っている気持など持てる筈がない。

   イアン・ブレマーさえもが、「スーパーパワー」で、アメリカのこれからの生きる道は、もう、世界のすべての問題に責任を負ったり国外の課題解決に手を出すことから独立して、米国自身の安全を担保することに注力すべしと、国内回帰戦略を説いており、多くのアメリカの知識人も、このような考え方をし始めていると言う。
   世界の平和と安全を維持するための公共財の提供をアメリカは、止めざるを得なくなった、世界の警察としての役割を放棄するというのである。
   既に、オバマ大統領の消極的な政策で、不幸なことに、抑えが利かず、中国などが跳ね上がり、ロシアとの関係が悪化し、ISの台頭など中東で深刻な事態が拡大しつつあると懸念されている。

   ジョージ・フリードマンが、「新・100年予測 ヨーロッパ炎上」で、ヨーロッパは、1912年から1944年までの「三一年間」に、営々と築き上げてきた最高峰のヨーロッパ文化文明の成果を、殆ど失ってしまったと葬送行進曲を奏しながら、アメリカの覇権国家への台頭を語っている。
   アメリカの戦後の最大の貢献は、ヨーロッパへのマーシャル・プランの実施であろう。
   第二次世界大戦終戦後、巨額の対外余剰を保有していたアメリカは、一般援助に加えて、ギリシャで共産主義政府が出来るおそれに対抗して、ヨーロッパ復興計画を通じて、アメリカのGDPの2%に匹敵する輸入品の購入資金をヨーロッパに提供し、これが効を奏して、膨大なアメリカ製産物に対する海外需要を生み出した。
   このプロセス、マーシャル・プラン援助は、IMFや国際復興銀行を生みだしたブレトンウッズ会議でケインズが提案し拒否された原理の、期せずした応用となり、一気にヨーロッパ経済のみならず、世界経済を浮揚させて、繁栄期を迎えた。
   この時、アメリカは、世界最強の経済力を駆使して、世界の警察として、冷戦下でソ連と対峙しながらも、世界の平和と安全のための公共財の構築に邁進した。
   その結果と言えようか、大戦争を起こさずに、ソ連など共産国家の崩壊に導き、世界経済をグローバル化し、新興国の劇的な台頭を惹起して、今日のグローバリゼーション秩序を築き上げてきたのである。

   ところが、この過程で、アメリカ経済の停滞と新興国の台頭などグローバリゼーションの進展により、最早、アメリカが、これまでのように世界の公共財を構築し維持する経済力のみならず能力を喪失し、覇権国家のないGゼロ時代に突入してしまった。

   この時点での、最早ない袖を振れなくなったアメリカに対する、トランプの「世界の警察」放棄の発言である。

   この問題については、これまで、アメリカの覇権や中国論を論じながら、随分書いて来たので、蛇足は避けるが、このあたりの正しい認識を平和ボケの日本人が誤ると、大変なことになると言うことを指摘しておきたい。
   トランプは、単に戯言を言っているだけではないということ、アメリカの現実だと言うことである。
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