運動部指導のガイドライン(文科省が公表)

5月27日に文科省より「運動部指導のガイドライン」が打ち出されました。この影響力は、単に学校の運動部活動の範囲に限らず、私たち小学生スポーツ指導者も同様の見方をされると思っていた方が良いでしょう。なぜなら、このガイドラインには学校の教員だけでなく、教員免許を持っていない外部指導員(コーチ)に対しても指針として打ち出されているからです。私たち小学生バレーボール指導者は、社会体育・社会教育または、スポーツ少年団指導員といった立場で活動していますが、その立場は中学高校の外部指導員以上に影響力を持つものです。心の抵抗力の少ない大切な小学生時代にマイナスな指導を体験させるのは避けたいところです。そのため、当ブログで文科省のガイドラインの中で、必ず読んでおいたほうが良い箇所を紹介しておきます。本記事を目にした指導者の方は、「そんなこときれい事だよ」「うちにはうちのやり方がある」と思う方も中にはいるかもしれませんが、そのような心の壁をいったん取り外して、冷静な感覚で、文科省の打ち出しを熟考し、明日からの指導に役立てていただければ幸いです。

まずは文科省のガイドラインへのリンクです。

運動部活動の在り方に関する調査研究報告書 ~一人一人の生徒が輝く運動部活動を目指して~

全部で19ページもあるので、読むのが大変。そこで私が必要な部分を抜き出して紹介していきます。

スポーツの指導において体罰を行うことは、このようなスポーツの価値を否定し、フェアプレーの精神、ルールを遵守することを前提として行われるスポーツと相いれないものであり、スポーツのあらゆる場から根絶されなければなりません。現にトップアスリートとして活躍する者の中で、指導において体罰を受けた経験がないと述べる者がいるように、優れた指導者、適切な指導を行える指導者は、体罰を行うことなく技能や記録の向上で実績をあげており、スポーツの指導において体罰は不必要です。」

日本が現状よりも競技力を向上させるためには、体罰指導よりも「科学的指導」を重視することが大切だと私自身は思っています。子供の指導は学べば学ぶほど様々な気づきが指導者にも子供たちにも生まれ、その気づきが成功体験や充実感、楽しさに結びつきます。人間の脳は楽しいことを最も好みますから、気づくことの楽しさをたくさん経験できた子供は自ら努力し、向上していくようになります。これがひとつの「生きる力」だと思います。


【通常のスポーツ指導による肉体的、精神的負荷として考えられるものの例】
計画にのっとり、生徒へ説明し、理解させた上で、生徒の技能や体力の程度等を考慮した科学的、合理的な内容、方法により、下記のような肉体的、精神的負荷を伴う指導を行うことは運動部活動での指導において想定されるものと考えられます。
(生徒の健康管理、安全確保に留意し、例えば、生徒が疲労している状況で練習を継続したり、準備ができていない状況で故意にボールをぶつけたりするようなこと、体の関係部位を痛めているのに無理に行わせること等は当然避けるべきです。)
(例)
・バレーボールで、レシーブの技能向上の一方法であることを理解させた上で、様々な角度から反復してボールを投げてレシーブをさせる。



最近、監督間の話題に「ワンマンレシーブ練習は体罰なんだって。だからワンマンはもうできなくなるよ。」ということがあがっていましたが、それは間違いです。計画的な指導の中で効果がある練習で、さらに指導を受ける子供がその練習の意味を理解しているのであれば、ワンマンレシーブ練習はまったく体罰には値しません。では何が体罰なのか?それは指導者の思い通りに子供が動いてくれないイライラをぶつけたり、誰が見ても暴力的な行為として球出しをしていたらそうなります。学校の教員だと「戒告処分」が下ります。ひどい行為の場合は「停職」や「減給」になります。1ヶ月以上の障害を負わせた場合は「懲戒免職」になる可能性もあります。


ここからが具体的な体罰・問題指導の例となります。

【体罰等の許されない指導と考えられるものの例】
運動部活動での指導において、学校教育法、運動部活動を巡る判例、社会通念等から、指導者による下記の①から⑥のような発言や行為は体罰等として許されないものと考えられます。
また、これらの発言や行為について、指導者と生徒との間での信頼関係があれば許されるとの認識は誤りです。指導者は、具体的な許されない発言や行為についての共通認識をもつことが必要です。

①殴る、蹴る等。

②社会通念、医・科学に基づいた健康管理、安全確保の点から認め難い又は限度を超えたような肉体的、精神的負荷を課す。
(例)
・長時間にわたっての無意味な正座・直立等特定の姿勢の保持や反復行為をさせる。
・熱中症の発症が予見され得る状況下で水を飲ませずに長時間ランニングをさせる。
・相手の生徒が受け身をできないように投げたり、まいったと意思表示しているにも関わらず攻撃を続ける。
・防具で守られていない身体の特定の部位を打突することを繰り返す。

③パワーハラスメントと判断される言葉や態度による脅し、威圧・威嚇的発言や行為、嫌がらせ等を行う。

④セクシャルハラスメントと判断される発言や行為を行う。

⑤身体や容姿に係ること、人格否定的(人格等を侮辱したり否定したりするような)な発言を行う。

⑥特定の生徒に対して独善的に執拗かつ過度に肉体的、精神的負荷を与える。

上記には該当しなくとも、社会通念等から、指導に当たって身体接触を行う場合、必要性、適切さに留意することが必要です。
なお、運動部活動内の先輩、後輩等の生徒間でも同様の行為が行われないように注意を払うことが必要です。



このように文科省から公式に発表された文書を指導者は安易に考えてはなりません。この文書はかなり大きな影響力を持ちます。なぜなら、日本中の校長、副校長クラスは一斉にこの文書に目を通し、自分の学校内(開放施設を使っている外部団体も含んで)で体罰指導が行われていないだろうなと監視の目を光らせるようになるからです。今の指導がチーム内で納得されていても、その競技とまったく関係のない第三者から指摘を受ける可能性を想定しておくべきです。要するに、いつ誰が見ていても、「このチームの練習は素晴らしい!勉強になる!」と言われるような指導方法に近づいていく努力をしていくことが大事なのではないでしょうか。

できるかどうかは別として、辰巳ジャンプの指導はそのような道を目指していくつもりです。今日も新しいメンバーが練習試合に出てくれましたが、最高に楽しそうに試合をしてくれました。サーブで3点取れたら「バボちゃんシール」をもらえる「バボゲットシステム」にワクワクしながら、また、3点目を取る時のサーブにドキドキしながら試合をしていました。自分の努力でシールをゲットした時の喜ぶ笑顔といったら本当に子供らしいですね。
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