
十和田観光電鉄の旧型車、東急ファンとしてはどうしても先にデハ3655改めモハ3603に眼が行ってしまいますが (^^;)、むしろ十鉄として断トツで誇っている車両はモハ3603と手を組んでいるモハ3401であろうことは疑いを容れないでしょう。勿論、今の視点でモハ3401を見れば、バス窓が如何にも昭和20年代末~30年代風な単なる釣掛式電車かも知れませんが、仔細に実車を眺めてみますと……東武78系の名台車であるFS10をさらに頑丈かつデラックスにした雰囲気の台車に加え、腰高で堂々たる重量感の18m級車体、そして恐ろしく高いとすら思える丸天井にゆったりとした座り心地の (?) 椅子などなど、製造された昭和30年の私鉄車両としては相当豪華なスペックであったことが痛感されます。しかも実際に乗ってみますと……釣掛式電車としては実に揺れが少なく、走行音も低めで優雅な乗り心地……。もちろんモハ3401のモーターも駆動していたはずですが、豪快な釣掛サウンドの圧倒的な部分は隣のモハ3603から伝わって来たもので、モハ3401はクハ代用なのではないか?とすら思えたほどです (笑)。

というわけで、イベント運行の客が「少なめ」であった最終日になりますと、3603の方は椅子がかなり埋まっていたのに対し、3401は相当余裕のある乗客数となっていました (汗)。それはまぁ……釣掛趣味という観点からいえば轟音と揺れが多いほど楽しいに越したことはありませんが (^^;)、やはりここは折角ですので、3401の「優雅」な走りも楽しんでおきたいもの。かなり気合いが入っていた当日の車内放送では、モハ3401は当時の東北一のロマンスカーとして製造され非常に好評を博したそうですが、確かに当時のみちのくを行き交う列車もことごとく車内ニス塗り&白熱灯の旧型客車だったでしょうから (とくに普通列車は背もたれが板張りの61系客車が中心だったはず・・・)、そこに突然降って湧いたバス窓の大型 (?) 車は戦後当初の暗さを払拭する驚愕の存在だったのでしょう。首都圏においてすら恐らくそうだったでしょうから、況んやみちのくにおいてをや……。
そんな歴史を秘めたモハ3401、恐らく林檎を意識した塗装も何とも素晴らしく、少なくともビジュアルの親しみやすさという点では東急ステンレスカー軍団は勝てないでしょう (地元利用者はステンレスカーの方が都会的で良い、と思っておられるのかも知れませんが ^^;)。というわけで、非常に美しく塗り直されてツヤツヤした表情のモハ3401を激写しつつ、せめてこの車両だけでも今後とも十和田観光電鉄生え抜きの至宝として維持して欲しいものだ……と思ったのでした。
ちなみに、3日間のイベントのあいだは毎日1往復が急行として運行され、モハ3401には小振りな急行板が装着されましたが、17日は急行運転時にとくに光量が落ちてしまい、18日は急行に乗ってしまいましたので、納得のカットを撮影出来なかったのは我ながら「しまった」という感じです (笑)。

余りの暑さと急激な暗さで集中力が完全に切れ、モハ3603のパンタの位置が微妙すぎることに……(滝汗)。でもまぁ、かなりの高感度に振っても鮮やかに撮影出来、さらにトリミングとレタッチでまぁ見られるカットになったのは、文明の利器・EOS 5D MⅡ及びレタッチソフト様々といったところでしょうか。