地味鉄庵

鉄道趣味の果てしなく深い森の中にひっそりと (?) 佇む庵のようなブログです。

第四ジャカルタ炎鉄録 (0) 東西千代田の時代

2012-08-13 13:27:00 | インドネシアの鉄道


 急激な経済発展をとげる東南アジアの中でも最大の人口を誇るインドネシア。その首都ジャカルタには東京首都圏にこそ及ばないものの凄まじい人口が集中し、街中が人とクルマとバイクで埋まりつつあるという危機的な状況を呈しています。だからこそ、インドネシア鉄道 (国営鉄道会社) の子会社であるKCJ (ジャボデタベック通勤鉄道) は、激増する輸送需要に応えるべく日本から中古電車を輸入し続け、その結果今やジャカルタの地は東京の電車博物館の観を呈しているのは周知の通りです。そこで私も、東急8000系列の活躍に刺激されて2009年に初訪問して以来、その独特の雰囲気にのめり込んで通っているところであります (笑)。
 そしてこのたび、現地で使える時間を計5日確保し、1年ぶりの再訪を果たして参りました。そこでこれから、私なりにとらえた現地の最新事情をレポートし、ご興味をお持ちの奇特な方のご参考に供したく存じます。
 まず総論として申しますと……東急電車を最大のお目当てとして訪れようという方は、既にその機を逸したと言っても過言ではないでしょう。と申しますのも……昨年来の猛烈なメトロ05・6000・JRE203系の導入に加え、これまで散々酷使されてきた東急8500系に長期離脱車が発生していることから、本線格のボゴール・ブカシ線が完全に「東京メトロ東西・千代田線」状態になっているためです (超爆)。あるいは、今回非常に調子が良かった東西線5000系及び東葉高速1000系も含めて、「東京メトロ・ジャボデタベック線」という雰囲気が炸裂しているのです……。



 勿論、来る電車は全て撮るという心構えで臨みましたので、東京メトロ系車両でも構わないのですが、東急8000系列の入れ食い状態だった昨年までと比べると余りにも変化が大きく、東急ファンとしてはへこみます (^^;)。もっとも、確実に動いていないのは8604・8607・8613Fのみで、残りの東急8000系列は大活躍していますので、決して数は少なくないのですが、それでも「当たりにくくなった」と感じるのには理由があります。
 (1) 運用が全く固定されず、朝ラッシュが終わると入庫する編成が多いため、運が悪ければ東急8000系列が日中余り走らない。
 (2) 昨年12月ダイヤ改正による運行系統変更の結果、環状東~西線とボゴール線を直通する列車が増え、ジャティヌガラからボゴールまで片道2時間かかるため、この運用に入った車両は沿線で見張っていても長時間来ない。とくに、中央線のジャカルタ・コタとマンガライの間で待ち構えているとアウト (滝汗)。
 (3) 中央~ボゴール・ブカシ・環状線以外にも東急8000系列が運用される路線が増え (後日詳細にレポートします)、ばらけた感じで走っている。

 ……とまあこんな感じで、東急車について言えることは他のすべての編成についても言えることですので、総じてお目当ての編成を撮り貯めるのは運次第という雰囲気が極めて強くなりました。これはもうギャンブルです……。急行が運転されていた頃は、東急8000系列が急行運用の花形だっただけに、数本の8000系列が短時間のうちにジャカルタ・コタとボゴール、デポック、ブカシの間を往復し、それが一層「東急8000系列天国」を演出していたのですが、最早遠い過去の話……。このため、とにかく勝手が変わって苦労の連続ではありましたが、それでも5日間激闘した結果、少なくとも最大のお目当てであった東急8000系列・JR203系・メトロ6000系については、そこそこ撮影成果を収めることが出来たかな?と思っております。
 ただ、先述の東急8500系3本に加え、期待していた車両が全く出て来なかったのは痛恨の限りです……。東海色となった103系が全く運用に入っていないとは! (このへんの事情もいずれ詳述します) 
 何はともあれ、日本中古車・日本製非冷房車・客車列車と各種車両が入り乱れ、車両の陣容も、そして遅延も (@_@) カオスの度を増しつつあるジャカルタの鉄道シーン、これからじっくりとお楽しみ頂ければ幸いです。
 なお今回の訪問に際し、現地発信のブログを始められたパクアン急行様の情報を大いに参考にさせて頂きました。また、現地のファン・Adam Faridi様には楽しいひとときを共有させて頂きました。この場を借りて御礼を申し上げます m(_ _)m

 以下、いくつかお断り、そして気づいた点を……
 * 例によって線路内に立ち入りまくっておりますが、原則線路内立入禁止です。単に線路内を歩く沿線民同様、黙認されているに過ぎません。
 * 写真撮影は原則として許可制です。しかし私の場合、今回も全く無許可で撮影しました。某駅で撮影中、制服を着た幹部職員 (?) に「izin (許可) はあるのか?」と訊かれ、「申し訳ない。日本から来たクレタアピ・マニアである」と答えると、突然親指を立てて「Good!」となりましたが (笑)、これもひとえに、これまで日本とインドネシアの鉄道関係者のあいだで構築されてきた信頼関係、あるいは現地を訪れた日本人ファンが安全に配慮し敬意を以て係員に応対してきたことの積み重ねかと存じますので、くれぐれも「日本人だから何をしても良い」と誤解することのなきようお願い致します。あるいは、私が持っていた白玉つきデジ一眼を見て、商業用の撮影ではないかと勘繰ったのかも知れません。
 * 公式HPに載っている昨年12月のダイヤと比べて、現在のダイヤはデポック~ボゴール間の本数が減っている (デポック出入庫のつもりを何故ボゴールまで延長運転なのか……-_-) ほか、所定ダイヤと比べて10~20分ほど遅れるのが恒常化しており、今日来た列車が明日同じ時間に来るとは限らない……遅れすぎると無理矢理次の同じ行き先の列車スジに重ねるという、何ともギャンブル性が強烈な世界となっております。その一因として、長距離列車の発着駅であるガンビール駅やパサールスネン駅での機回し待ち、あるいは一大ジャンクションであるマンガライ駅のポイント切り換え待ちなど、かねてから存在する問題が本数増加で一層顕在化していることが考えられます。本数が少なければ客をさばけず、本数を増やしてもダイヤが乱れやすくなり……現在の線路設備を前提とすればかなりヤバい状況になっています (汗)。その一方で、時刻表に載っていない列車がひょっこりジャンジャン来たり……いやそもそもその列車自身も大幅に遅れているだけなのかも (滝汗)。
 * 昨年12月以来、上記の線路設備の限界 (とくにマンガライ駅のパンク状態) をある程度緩和させるため、環状線主要駅において乗り換えることが前提となっています。その結果、車内検札のルール・パターンも変わりました。昨年までは環状線・中央線においても、冷房車に乗るとすぐに体格が良い切符切りの兄ちゃんが切符を切りに来たものです。しかし現在では、環状線内では車内検札せず、列車が環状線の外側に出たときに初めて検札に来ます。では、環状線内では検札に来ないことから、運賃をちょろ負かすことは出来るのか……? それは、改札口にてコワモテの兄ちゃん駅員がドカッと居座り、きっちりと切符を回収していますので不可能です (昨年までは改札口に誰もいないのもしばしばでした)。無札乗車は最高で50,000ルピアのペナルティを科すぞ!という貼り紙が車内のあちこちに貼ってあります。
また、下りホームと上りホームの双方に改札口がある駅が多いため、「改札口から外に出ない限り日本と同じように下り・上りホームを行ったり来たりしながら駅撮りする」というのは不可能となりました。
 *お盆休み近くだけに、日本人撮り鉄があちこちに……と思いきや、他に全く日本人撮り鉄を見かけませんでした (笑)。ま、いくらRM誌やRP誌に載るとはいっても、わざわざ行こうという人は極めて少なく、基本的に内向きなのが日本の鉄道趣味事情なのでしょうか。