楽しみは後にとっておく、という言葉があるように、過去3回のジャカルタ撮り鉄記では最大のお目当てである東急8000系列の話題を後回しにしてきたものですが、今回はそれを翻し、敢えて一番最初に8039Fの姿をご紹介したいと存じます。何故なら、8039Fは最近2年に1回の全検を終え、ジャカルタに来てから3つ目の新たなカラーリングとなっているだけでなく、これまで想像だにしなかった新たな展開として、線路市場の駅として知られるドゥリから分岐して真西に向かうタンゲラン線に入線していたからです!!
このうち新色については、8003Fや8007Fと同じ明るめの青+黄帯となることが前もって予想され、加えて女性専用車ラッピングが施されたことについても「出来ればラッピング無しの方が良いけど、あればあるで如何にもインドネシアらしい色彩感覚が似合っていなくもないので悪くない……とゆーか、ある意味でメチャクチャ歌舞伎的でもある」と思っておりましたので、最初から素直にピカピカな8039Fとの再会を楽しみにしていたのでした。正面の投石避け網の枠も銀色から黒となり、何だか雰囲気がグッと締まりましたし……(^O^)。
しかし、撮影初日と2日目、「ここで待っていれば必ず8039Fが来るだろう」と信じて疑わなかった中央~ボゴール線で、待てど暮らせど8039Fはやって来ない……。そこで「これはもしや急に故障してしまったのか。それとも予備車扱いとしてずっとデポックで寝たままなのか……。折角はるばるジャカルタまでやって来たのに、しかも全検明けであるはずなのに、来ないとは悲しすぎる……」と嘆かずにはいられなかったのでした。
ところが撮影3日目、ひょんなことから最高に奇跡的な展開に! この日はまずブカシ線・ジャティヌガラ以東(複々線工事区間)での走行シーン撮影に初挑戦し、長距離列車はそれなりに撮影したものの、ブカシ行きの電車はメトロ尽くしゆえ、203系及び東急8000系列は全く撮れず、何とも言い様のない残念感を抱きながら (メトロ党の皆様スミマセン ^^;) 一旦宿へ。正午前後の酷暑をしのぐためしばし涼んだのち「午後はそういえば、スルポン線で客車列車に乗ったことはあるものの電車には乗ったことがないので (何せスルポン線は東急車が入線しませんので、毎年訪問しても撮り鉄したことなし ^^;;)、電化区間の終点であるパルン・パンジャンまで往復してみようか」と思ったのでした。そこでジャカルタ・コタからカンプン・バンダン行の短距離シャトルに乗り、さらにジャティヌガラから来たデポック行の8618Fに乗り、8500系でのカンプン・バンダン以西・環状西線初乗車を楽しんでいたところ、いよいよ名所 (迷所? ^^;)・線路市場がある、タンゲラン線との分岐駅ドゥリに到着~。とりあえず、タンゲラン線は時刻表上毎時0分発となっており、自分が乗っているデポック行は時刻表上連絡しない以上、タンゲラン線の発着ホームである3番線を注目しても仕方がありません。
ところが……何と!既に0分をとっくに過ぎているというのに、その3番線で東急8039Fが発車待ちしているではありませんか!! 一瞬、余りにも想定外の事態ゆえ、何がどうなっているのか分けがわからず、ただドアの向こうに見える8039Fをポカーンと眺めていたのですが、次の瞬間「これはパルン・パンジャンどころではない! 初訪問以来3年ぶりのタンゲラン往復に方針転換だ!」と思い、ドアが閉まる直前にホームに飛び降りたのでした。とはいえ、タンゲラン線の発車時刻もとっくに過ぎ、デポック行からの乗換客を吸い込んだ8039Fはすぐに発車してしまうかも知れず、一方自分が持っている切符はパルン・パンジャンまでのものであり、タンゲランまでのものではないため、速攻で改札外に出て切符を買い直さなければなりません。そこで「まだ発車しないでくれよ……」と祈るような気持ちで切符を購入し、見事間に合ったぁぁっ! もっとも、それは全て取り越し苦労であり、タンゲラン行の8039Fは数分後にタナ・アバン方面から来た列車と連絡してようやく発車したのでした (笑)。どうやら、時刻表上の「毎時0分発」(朝夕は運転間隔が狭まりズレます) というのはあくまで目安であり、環状西線上下列車と適度に連絡をとった上で発車するという超臨機応変な運転となっているようです (笑)。
そうなると、タンゲラン線のダイヤはガタガタに崩壊では??と思うのですが、心配はご無用。もともと標準ダイヤ自体、途中のラワ・ブアヤ駅での交換を含めて十分余裕のあるものとなっており、しかも8039Fは遅延を回復すべく……「これってほとんど東横特急の武蔵小杉~菊名間じゃないか?!」と思うほどの大爆走!! 時刻表上ではドゥリ~タンゲラン間の所要時間は42分となっているものの、実際には30分ほどで着いてしまいました (滝汗)。ボゴール線のデポック~ボゴール間をはるかに上回るブッチギリの走りは、まさにインドネシア風「ティダッ、アパアパ (まぁ大丈夫)」精神のあらわれかも知れませんが (^^;)、それ以上にタンゲラン線は現在、空港鉄道としての機能も兼ねるべく複線化・線路改良が大々的に進められており、自ずと東急8000系列の高速走行に適した環境が整えられているということでもあります。
しかしそんなタンゲラン線、3~4年ほど前までは103系の4連準急と非冷房エコノミーの4連がそれぞれ2時間間隔で運行され、しかも線路がガタガタで相当揺れたという過疎気味の路線でした。その後、私が初訪問した3年前の少々前に103系4連が都営6000系6連になったものの、それでも日中はスカスカで、うらぶれた雰囲気は否定出来ず……。それが昨年末のダイヤ改正以来冷房車オンリーの世界となり、しかも今回の訪問に先立ち「インドネシア鉄の宴」にて、メトロ7000系8連が入線したことを伺っておりましたので、タンゲラン線大躍進の気運は何となく感じておりました。それでも、まさか従来ボゴール・ブカシ線系統に君臨する東急8000系列が入線するとまでは予想出来ませんでしたので、とにかく8039Fがタンゲランへ向けて超激走するさまに圧倒されながら、「やはり毎年訪れるごとにジャカルタの電車シーンは違うなぁ!」と痛感したのでした……(*^O^*)。
そして、終点のタンゲラン駅にてクハ8039の正面を見たところ、行先幕はズバリ「タンゲラン」! この幕も、上記の宴にて確かkucing様あたりから「タンゲラン幕が8039Fに入ったそうだけど、まさかネタ幕過ぎますよね」というお話を伺っていましたので、まさか本当にタンゲラン行として使うために幕も用意したのか!という新鮮なオドロキが (笑)。というわけで、折返しまでの10数分間、とにかく様々なアングルでタンゲラン停車中の8039Fを撮るべくハッスルしまくったのは言うまでもありません (爆)。