約5ヶ月少々にわたり、思い出した頃にアップを続けて来たベトナム・ハノイ訪問記も今回が最終回。画像をレタッチして記憶を文字に表しながら、同時に頭の片隅に渦巻いていたのは、まさに竹のようにしなやかに変わりゆくベトナムの現在そのもの。そして、ハノイとホーチミン市における都市鉄道の建設にも象徴されるように、そんなベトナムと日本の関係はますます深化を続けており、折しも野田首相によって明確に示された海洋国家宣言のもと、日越関係は温暖で平等互恵を旨とする海洋国家関係の重要な一翼を構成して行くことになるのでしょう。
その過程でのひとつのネックは、ベトナムが共産党体制であることそのものであり、経済発展とともにあたかも中国の縮小版のような様々な矛盾が生まれているわけですが、何のかの言ってどことなくユルく臨機応変さが目立つのもベトナム。気が付いてみたらより開かれた体制へと進み、政治社会のあり方も含めて日本と価値観を共有できる日を期待したいものです。あのビルマ (ミャンマー) も大胆に変化し続けているのですから、ベトナム共産党も社会の多元化に向けた思い切った決断が出来るはず……。勿論、民主化すれば日本との関係がよりハッピーになる、という楽観的図式を単純に描けるわけではないということは、C国やK国のグロテスクな現実が露骨に示すところですが、他の東南アジア諸国と本朝との関係に照らし、ベトナムはその心配は少ないでしょう。
というわけで、鉄な話題においてプラスの波及効果がいっそう現れることを期待しつつ、ベトナムがらみで語られる新聞・ネット記事に日々注目する私だったりするのであります……。
そんなことをいろいろと考えたハノイ初訪問記のシメは……モスラ罐D8Eリターンズ! (笑) 驚異の現役満鉄客車はもとより、世界各国の様々な技術や車両デザインが雲集し、あたかもベトナム近現代史そのものの如くカオスの度を極めているベトナム国鉄にあって、今から約10年前に近未来のベトナム国鉄を先取りするべく (?)、ドイツのICEあたりのデザインを真似て (?) 現れたD8Eは、何のかの言って前衛的であろうとしながらも今ひとつハズした風貌、そして驚くほどの華奢な性能であるという点で、まさに過渡期のベトナムを象徴するような車両となってしまっているわけですが、振り返ってみますと連載中一番反響が大きかったのがこの罐であるというのは必然なのか偶然なのか……(笑)。
そんな、どう見てもモスラにしか見えないD8E、既に現役機はこの1両しかなく、恐らく統一鉄道のハイヴァン (海雲) 峠やラオカイ線など急勾配線区への入線は避けられていることに加え、ベトナム国鉄の現役罐では唯一、終点での方向転換を必要としていることから、どう考えても今後の新型DL増備に伴い先行きは長くないわけで……。果たして撮影から5ヶ月少々過ぎた現時点でも引き続き運用に入っているのか、全く知る由もありません。そこで、当ブログの記事に刺激されて訪問されましても、この罐に出逢えるか否か一切保証出来ませんし (笑)、私自身にとっても、こんな罐に出逢えたこと自体が未だに白昼夢のように思えるのです……(^^;)。
さて、これから何年後にハノイを再訪することになるのか、現時点では想像もつきませんが、ベトナムのさらなる発展と日本技術による鉄道の大胆なイノベーションを祈りつつも、一方でボロく慕わしい既存の鉄道シーンの消失を寂しく思うという、何とも矛盾した心理が今後もしばらく続くことになるでしょう (^^;)。本シリーズを長らくご笑覧頂き誠にありがとうございました m(_ _)m