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ミステリ感想-『綺羅の柩』篠田真由美

2006年07月11日 | ミステリ感想
~あらすじ~
30年前、マレーシアの山中で謎の失踪を遂げたシルク王ジェフリー・トーマス。
そして現在、シルク王の面影を色濃く心に刻んだ人々が集うとき、失踪の真相が白日にさらされ、新たなる謎が照らし出される。


~感想~
要望どおり(?)ファン以外はまったく楽しめないシリーズものへと突っ走っている。
隠された事実もトリックも、ミステリではお約束のようなものばかりで、すこしも驚くことができない。物語もいたって冗長で、盛り上げるべきところも淡々と流れてしまい、山場が見当たらない。せっかくの謎めいた美少女霊媒師も、キャラも性格も設定も練り不足で中途半端。いわゆる「キャラ萌えライトノベル」へと変貌を遂げつつあるのに、主人公格の数人を除けばまったく血が通っていない(というかキャラが立っていない)のは残念。
もはやこれはミステリではなく、京介らのやりとりを楽しむトラベルストーリーとして見るべきだろう。
「建築探偵」の肩書きも、建築物がただそこにあるだけではなんらの効果も発揮はしない。
だいいち提示された謎たちも、たとえば(以下ネタバレ→)綾乃と京介の過去、足を引きずる刀根、そして肝心要のトーマスの失踪の理由と、まったく触れられないまま幕を閉じてしまう。シリーズも9作目を迎え、伏線をばらまく時期は終わったはず。いいかげん伏線の回収にいそしんでもらいたいものだ。


06.7.11
評価:★ 2
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