~あらすじ~
「三年坂で転んでね」大学を辞め帰郷した兄はそう言い残しこの世を去った。
上京した弟は三年坂を追い、東京中を奔走する。
三年坂とは? そして大火のたびに目撃される謎めいた車夫の正体とは?
第52回江戸川乱歩賞受賞作。
~感想~
良くも悪くも、古き良き時代の探偵小説をほうふつとさせる物語である。設定といい舞台といい、平成にものされた作品とは思えない雰囲気をたたえている。
構成もトリックより雰囲気で組み上げたようで、昨今流行の「表の事件で裏の事件を覆い隠す」二重構造だが、それがほとんど機能していないのが残念。つまり、本筋として描かれる物語の中にこっそりと現れる、裏で進行している物語の一部分が、どうにも物足りないのだ。たとえば手がかり・伏線と呼ぶにはあまりに小さすぎたり、裏の物語を指し示すほど重くはなかったりと。
また、「三年坂」と「火の夢」の謎が交錯するのが終盤も終盤で、2つの物語が共鳴するわけでも、1つの物語の表裏を描くわけでもなかったのも寂しい。
謎解きといい終局の展開といい、全体的に練り不足と感じてしまう雑多さでなんとも惜しい作品。しかしこれだけの雰囲気をかもし出せる力量はあるのだから、次作への期待はできる。
06.11.7
評価:★★ 4
「三年坂で転んでね」大学を辞め帰郷した兄はそう言い残しこの世を去った。
上京した弟は三年坂を追い、東京中を奔走する。
三年坂とは? そして大火のたびに目撃される謎めいた車夫の正体とは?
第52回江戸川乱歩賞受賞作。
~感想~
良くも悪くも、古き良き時代の探偵小説をほうふつとさせる物語である。設定といい舞台といい、平成にものされた作品とは思えない雰囲気をたたえている。
構成もトリックより雰囲気で組み上げたようで、昨今流行の「表の事件で裏の事件を覆い隠す」二重構造だが、それがほとんど機能していないのが残念。つまり、本筋として描かれる物語の中にこっそりと現れる、裏で進行している物語の一部分が、どうにも物足りないのだ。たとえば手がかり・伏線と呼ぶにはあまりに小さすぎたり、裏の物語を指し示すほど重くはなかったりと。
また、「三年坂」と「火の夢」の謎が交錯するのが終盤も終盤で、2つの物語が共鳴するわけでも、1つの物語の表裏を描くわけでもなかったのも寂しい。
謎解きといい終局の展開といい、全体的に練り不足と感じてしまう雑多さでなんとも惜しい作品。しかしこれだけの雰囲気をかもし出せる力量はあるのだから、次作への期待はできる。
06.11.7
評価:★★ 4