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ミステリ感想-『三百年の謎匣』芦辺拓

2006年11月27日 | ミステリ感想
~あらすじ~
巨額の遺産と謎めいた書物を残し、依頼人は袋小路に消えた。
謎を解く鍵は、時空を超え書きつづけられてきた一冊の本の中に?
世界を股に掛けくり広げられる数々の奇譚があわさるとき、三百年の謎匣が開いた!


~感想~
芦辺ハリウッドと銘打ち、東方、海賊、中華、密林、西部劇、大空とジャンルとり混ぜごた混ぜの一大エンターテインメント小説。
……なだけに、一つ一つのトリックはやや小さく、連作短編集のように合わさったときの破壊力も控えめ。騙しの手管など見事な冴えは見せるが、人物消失トリックの真相は脱力もの。ミステリとしての輝きはちょっと足りない。
その分、物語としての面白さは一級品。もともと大時代的な語り口だけに、古き良き時代を描くと、実に描写がしっくり来る。ふだんの現代劇では大げさとも取れる文体が、本領を発揮してくれるのだ。
これだけ多種多彩の物語を書き分け、さらにまとめてみせる手腕、さすがはかの『堕天使殺人事件』のトリを務めただけはある。つくづくなんでも描ける作家だと、感銘を受けました。


06.11.27
評価:★★★ 6
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