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ミステリ感想-『零崎軋識の人間ノック』西尾維新

2006年11月18日 | ミステリ感想
~あらすじ~
「零崎一賊」――それは“殺し名”の第3位に列せられる殺人鬼の一族。
釘バット“愚神礼賛”ことシームレスバイアスの使い手、零崎軋識の前に次から次へと現れるあの頃の殺し名たち。そしてその死闘の行く末にあるものは。
「かるーく零崎をはじめるちや」


~感想~
やはりこう言わざるをえない。
西尾維新は終わったと。

まずは富樫化。(幽遊白書化といったほうが正確か)
人がまるで死なない。死ぬのは序盤に出てくる名無しの20名のみ。まったくキャラを殺せなくなってしまっている。そのくせ物語は本編の数年前の設定のため、登場人物のほとんどは本編で死んでいるのだから処置無しである。
死ねば(殺せば)いいというものではないが、前作『零崎双識の人間試験』で無名有名とりまぜてあれだけ殺しまくっていたのに、なぜ本作ではろくに人死にが出ないのか不思議でたまらない。『ネコソギラジカル』上・中巻と下巻の対比を見ているようだ。
そして、前作『人間試験』を読み返して感じたのだが、本作は小説としてあまりに出来が劣っている。しっかりと構想を練って書かれたように思えないのだ。前作はウェブ連載という形式で長編としてものされ、今作は短編形式という違いはあるが、それにしてもこの完成度の差は歴然。小説としてミステリとしてファンタジィとして、前作にただのひとつも及ばないだろう。
展開に起伏や裏切り、全体を貫くテーマ、話を彩る名ゼリフ。それらが『人間ノック』には圧倒的に絶望的に少ない。前作や『本格魔法少女りすか』シリーズのような、異能と異能の駆け引きも薄く、イラストと、カバー見返しの名前を織り交ぜた詩くらいしか見どころがないといっても過言ではあるまい。
キャラ造型やセリフ回し、笑いを取るセンス、構築した世界観は健在のため、商品として成立してはいるものの、全盛期と比べれば(もう全盛期と呼ぶしかない)あまりに寂しい。『ネコソギラジカル』の悪い面をそのまま引きずってきてしまった。
蛇足および個人的感情になるが、戯言シリーズ最大の弱点は、ヒロイン玖渚友に一編の魅力も感じないところにあると再認識した。正直このキャラが好きな人っているのだろうかとまで思ってしまう。こいつにチームやいーちゃんがなぜ惚れ込むのか微塵も解らない。こういうのがタイプなのか維新……。
ともあれ。
維新は終わった。感想はそれだけである。


06.11.18
評価:★☆ 3
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