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ミステリ感想-『写楽 閉じた国の幻』島田荘司

2010年10月12日 | ミステリ感想
~あらすじ~
わずか十ヶ月間の活躍。突然の消息不明。写楽を知る同時代の絵師たちの不可解な沈黙。錯綜する諸説、乱立する矛盾。
歴史の点と線をつなぎ史実と虚構のモザイクが完成する時、美術史上最大の迷宮事件の真犯人「写楽」が姿を現す。


~感想~
こ れ は す げ え !!!

要するに写楽の正体に迫ったただそれだけの作品なのだが、その真相たるや、これが事実だとしか思えない圧倒的な説得力と、学術的興奮に支えられ、写楽研究にさして興味のない読者でも引きずり込むこと間違い無し。
一介の浮世絵研究家が写楽の正体を追っていくだけの構成なのに、この面白さはなんだ。写楽なんて名前くらいしか知らないのになぜここまで熱中させてしまうのか。
読み終え、写楽の正体に関してあまりにもそろいすぎた状況証拠に驚き、どこまで本当だよと疑いつつ後書き(物語の大筋と写楽の正体が書かれているので最初に読まないように)を見ると明らかになる「全部本当」というさらなる衝撃の事実。
すごいぞ島田荘司! 写楽研究家じゃないのに! 死ぬほど作家業で働いてるのに!

写楽の謎を解くだけで成立する物語なのに、必要以上に悲惨すぎる主人公の行く末とか、謎めいたままの教授の秘密とか、冒頭で大々的に出てきて究明の鍵となるかと思ったら全然そんなことはなかったぜ!な浮世絵とか、意味不明の手紙とか、ゴッド・オブ・ミステリ島田荘司をして「まるで新人のような目論見違い」と言わしめた、構想20年の名に恥じない情熱を傾けたがゆえにかえって置き去りにされた謎は山ほどあるが、それでも「すげーもん読んだ」と読者を満足させてしまうのだから恐れ入る。
これは島田荘司の新たなる代表作、いやミステリ史に残る大傑作(未完成なのに!)と呼んで構うまい。
歴史ファン、ミステリファンを問わず本好きは必読!


10.10.9
評価:★★★★★ 10
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