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ミステリ感想-『からくり探偵・百栗柿三郎 櫻の中の記憶』伽古屋圭市

2016年02月13日 | ミステリ感想
~収録作品とあらすじ~
多くの人から恨みを買っていた男が拳銃で頭を撃ち死体で発見される。捜査の結果、殺人と断定されるが現場は密室で……殺意に満ちた館
人気絶頂の閨秀作家の同居人が殺された。屋根裏から覗き見していたと名乗る犯人が手記を残しており……屋根裏の観測者
8歳の男の子が屋敷から姿を消し、暗号で記された犯行声明が見つかる。屋敷は衆人環視下に置かれており……さる誘拐の話
飼い犬ハチが持ち帰ってきた簪は、千代の旧友ふみの物に酷似していた。ふみはある事件を追い行方を絶っており……櫻の中の記憶


~感想~
シリーズ第二弾。
最後の一編こそ連作短編集として物語を締めるだけでトリックはほぼ無いに等しく、連作としての出来栄えも前作には全く及ばないが、その他3編はいずれも単純なトリックながら一工夫を加えることによって容易に真相を見抜けず、解決後に振り返るとタイトルのもう一つの意味が明らかになる。
しかもどの作品も終わってみれば、読んだことはなくとも誰でもあらすじやトリックを知っているような超有名ミステリのオマージュになっているのも特色で、全編にわたり非常に凝った仕掛けが施された労作で、これだけ器用な作家ならば近い将来に必ずや傑作をものすに違いないと予感させる。

なお前作の致命的なネタバレは無いものの、勘の良い人なら致命傷になりかねない興趣を削ぐネタバレが随所にあるので、やはり前作から先に読むことをお勧めしたい。


16.2.4
評価:★★★☆ 7
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