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ミステリ感想-『桜と富士と星の迷宮』倉阪鬼一郎

2016年02月17日 | ミステリ感想
~あらすじ~
風光明媚な日本桜富士館で催される、富士と桜を愛でる会。ひとりずつ旅に出なければならないというルールに従ったメンバーは皆、日本桜富士館に還ってくる直前で不可能殺人の犠牲になってしまう。「無傷」なのに死ぬ者、自在に飛び回る「天狗」に襲われる者…。メンバーが愛する日本の美そのものの光景が反転解体した時、誰も予想できないアーティスティックな真相が出現する!
※コピペ


~感想~
さすがにネタ切れの危機か、毎年恒例の小林幸子シリーズが翌年にずれ込んでしまった。
このシリーズも当初はまずミステリとして小説として成立した上で、そこにバカミス的トリックや偏執的な仕掛けを上乗せすることで、他にはない際立った個性を出していたのだが、巻を重ねるごとに偏執的な仕掛けだけが残り、そもそも小説として成立していないこともしばしばになってしまった。

今回もかの怪作「四重奏」ほどではないが103ページからの解答編までは非常に読みづらく、明らかに偏執的トリックを成立させるためにぶち込まれた珍名さんや、ルー大柴のごとき無駄な外来語がちりばめられ、しかもあまりにあからさまなため明かされる前に大体の仕掛けがわかってしまうという本末転倒ぶりが残念。
さらに途中でこれもあからさま過ぎて綱渡りにすらなっていないヒントが出されてしまい、全くサプライズを演出できていないのがもったいない。
最近のシリーズの中ではバカミス的トリックがきちんと存在し、気づきそうで気づかないギリギリの線を狙った偏執的仕掛けで謎の感動を呼び起こすことには成功しているが、クビツリハイスクールや脳みそボーン♪(ドブシャッ)のあたりは明らかに強引過ぎて説得力に欠けており、全体としてちぐはぐな印象。
なんとも惜しい一冊だった。


16.2.9
評価:★★☆ 5
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