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ミステリ感想-『碆霊の如き祀るもの』三津田信三

2018年07月06日 | ミステリ感想
~あらすじ~
海と断崖に閉ざされた陸の孤島のような村に伝わる3つの怪談と、現在進行中の1つの怪談。
取材に訪れた刀城言耶はまるで怪談をなぞって行くような不可解な数々の事件に巻き込まれる。


~感想~
目次を見ればわかる通り背景となる怪談だけで120ページ経過し、第一の事件が起こるのが200ページ目。第二以降はさらに先と、初期のシリーズに戻ったようなスローペースだがだからといって退屈も辟易もさせず、作者の腕前の向上と焦らない自信のほどがうかがえる。
このシリーズに期待するのはやはり謎の山と、築いては崩し、崩しては積み上げる試行錯誤しながらの怒涛の推理だが、例によって解決直前に列挙される謎の数は「凶鳥」で20個、「首無」で37個、「山魔」で35個、「水魑」で43個だったのが本作では驚異の70個を達成。
なのに解決編はいつもと同じ程度の56ページしかないが、期待通りに怒涛の推理を見せ、時に犯人や真相を据え置きにしながら目まぐるしく変わっていく変幻自在の論理展開も健在。最後には怪異と事件が密接に絡まる納得の解決と、とてつもない怪異で締めくくる、刀城言耶シリーズの最新作に恥じない傑作である。
また怪異のスケールがシリーズ屈指の大きさで、しかも読み返してみると最初に書かれた断り書きが全く別の意味を帯びてしまう周到さで、もはややりすぎ感すら覚えさせる、シリーズで最も怖い結末になっているのも素晴らしい。少なくとも本ミス3位以上は確定ではなかろうか?


18.7.6
評価:★★★★ 8
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