

~あらすじ~
22歳、その日暮らしの手塚道郎はサラ金のローンでヤクザに捕まった親友を助けるため、ATMを突破する偽札を作製。
偽札づくりに見せられた道郎は完璧な偽札を作ろうと決意するが…。
1996年このミス2位、文春4位、日本推理作家協会賞、山本周五郎賞、東西ベスト61位
~感想~
未読の方の興を削いではもったいないので伏せたが、あらすじは序盤も序盤のストーリーに過ぎず、この後は怒濤の展開が待ち受ける。
これまでリアリティにこだわってきた作者が、偽札づくりの過程は詳細に描きつつも物語そのものはエンタメに振り切ったそうで、二転三転し続けたまま最後まで駆け抜け、その気になれば一気読みも必至のスピード感を誇る。いわゆる悪漢小説にしてコン・ゲーム物の傑作である。
読めば読むほどそもそも偽札づくりが絶対に無理だと感じられる点に目をつぶる必要があり、最後の最後の稚気に富んではいるが新人作家がやりそうな突飛な仕掛けこそ賛否両論あるだろうが、とにかくネタバレするのがもったいない快作なので、少しでも興味があればぜひ読んでいただきたい。
ミステリ好きのみならず本好きならば誰しも楽しめるだろう。
23.5.18
評価:★★★★ 8