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ミステリ感想-『火のないところに煙は』芦沢央

2019年03月07日 | ミステリ感想
~あらすじ~
作家の私はホラー特集の企画に誘われ、記憶から封印していたある怪異を思い出す。
それを書いたのをきっかけに、さらなる怪異譚を聞くことになって行き……。

2018年このミス10位、文春5位


~感想~
かの米澤穂信「満願」に匹敵する傑作短編集「許されようとは思いません」が2016年にこのミス5位にランクインするなど話題を呼んだ作者が、明言こそされないが(ただし「許されようとは思いません」の作者と書かれている)自身を語り手にした実録怪談をものしてくれた。

冒頭の「染み」がぜひ映像で観たくなる怪談で、以降も「トリハダ」的なキ印が怖い話を交えつつ、ミステリ仕立ての伏線やどんでん返しを凝らし、しかし怪異として割り切れない怖さを残す、佳作が目白押し。
最後には連作短編集としてまとめ上げ、さらには現実をも取り込む手際の良さで、ホラーにも並々ならぬ手腕を持っていることを証明してみせた。

実録怪談といっても、もしこれが事実ならば一刻も早く「小説新潮」紙上で注意喚起すべきで、単行本に書き下ろしている場合ではない。
だが一編一編を取り出しても、怪談として高いクオリティを持ち、実話として信じさせるに足るリアリティも併せ持っており、宇佐美まことばりの、ホラーとしてもミステリとしても優れた本作のような作品を今後もぜひ書いてもらいたいと願ってやまない。


19.3.1
評価:★★★☆ 7
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3月の新刊情報

2019年03月01日 | ミステリ界隈
1日 新潮文庫
京極夏彦 ヒトでなし―金剛界の章―

6日 角川書店
有栖川有栖 こうして誰もいなくなった

8日 文春文庫
三津田信三 黒面の狐

8日 徳間文庫
青崎有吾 ノッキンオン・ロックドドア

12日 光文社文庫
山口雅也 キッド・ピストルズの最低の帰還

15日 講談社文庫
深水黎一郎 倒叙の四季
海堂尊 極北ラプソディ2009
高田崇史 神の時空 伏見稲荷の轟雷
薬丸岳 ガーディアン

20日 創元推理文庫
有栖川有栖 有栖川有栖の密室大図鑑 ※復刊
倉知淳 過ぎ行く風はみどり色 ※新装版

22日 文藝春秋
奥泉光 ゆるキャラの恐怖 桑潟幸一准教授のスタイリッシュな生活3
北村薫 中野のお父さんは謎を解くか
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