白鵬の身のこなしはドジョウを思い出させる。安来節というのは北関東の民謡(?)だったと思うが、ドジョウ掬いというのがある。あれはもっとも笊でドジョウをすくうのだったと記憶しているが、素手でドジョウを捕まえるのはとてつもなく難しい。
ヌルヌルしていて掴んだそばから身をくねらせてするりと手から逃げていく。むかし電車の中にぶちまかれたドジョウの大群を素手で捕まえようとして往生したことがある。田舎の実家に行ってお土産にバケツ一杯のドジョウを貰った帰りであった。ビニールの大きな袋に水と一緒に入れた。その袋をバケツに入れて電車に持ち込んだのである。日曜日のちょうど今頃で彼岸の客で電車は満員だった。袋は固く縛ると空気がなくなってドジョウが死んでしまう。生きたやつを持って帰って新鮮なまま裁こうというので袋は空気が入るように緩く縛っていた。それが満員電車に乗ってきた乗客の足で蹴とばされてバケツがひっくり返った。ドジョウは勿論電車の床に飛び出して這いまわったのである。
捕まえるそばからツルリと手から抜け出してしまう。乗客は気持ちの悪いものが床を這いまわるものだから大混乱になった。中には蛇と間違えてとてつもなく大きな声で悲鳴を上げる女性もいた。とうとう次の駅で緊急停車して駅員が飛んできた。その車両の乗客全員をホームにおろして、二十分ちかくかかってようやくドジョウを全部バケツに入れた。
白鵬の最近の相撲をみるとドジョウみたいだ。素肌がドジョウ肌に変化したのか。あるいはワセリンでも塗っているのか。一番好意的に取れば白鵬の運動神経が抜群だということになるが、昔はああいうところは見せなかった。動物的な機敏さは加齢に逆比例するものだから、年齢とともに機敏さが増すとは考えにくい。考えられるとすれば、なんらかのドラッグの効果だろう。反射神経を極端に鋭敏にする系統のドラッグ使用の可能性である。
モンゴル相撲は体に油を塗ってやると聞いたことがあるが、何か塗っているのか。発汗剤ならぬ発油剤でも飲んでいるのか。緊急時に体の中から油膜が出てくるのか。最近は後ろ向きにされながらドジョウのようにするりと抜け出す取り組みが多いね。対戦相手の意見感触も聞いてみたいものだ。