先日放送されたNHKの番組は衝撃的だった。チョコレートバナナにコーラの朝食、野菜を食べない子供らに迎合す親たち。「好きなものだけを食べる」この思想は、「好きなことをして何が悪い、他人に迷惑をかけなければ良い」とどこか符丁が合う。戦後この国が指標をなくし、それぞれが自らの保全に走った結果でないだろうか。われわれ戦後教育で育った世代は、実存主義を信奉するものが増えてきた。実存主義は、神への対抗軸として人間の存在を定義するなど、本来はかなり深遠な内容を持つ思想であるが、「あなたと私は違う」「価値観の相違」などと、ある意味論争すらしなくなる風潮の基礎を作ったように思えてならない。その結果が「好きなものだけを食べる」となり、自らの将来も社会のありようも無関心な人種を作ってきた。
これは「好きな人としか付き合わない」などとなって、社会構造などとは無縁の存在となる。しかし、彼らの好きなものは実は、様々な形でコントロールされていることすら気がつかないでいる。好きな食べ物は、甘く口当たりがよく簡便に作れるように作られ、繰り返しコマーシャルされる。それを受けて好きなものになっているに過ぎない。利潤追求の企業思想の傘下にあるだけである。好きな人も、マスコミが作り上げた虚構を追っているに過ぎない。タレントたちが声を高めて、他人を見下す番組が多すぎる。それも、読書すらしない「好きな番組だけを見る」人種には理解できないことかもしれない。