飼料用の穀物(コーン・トウモロコシ)が高騰している。飼料用の穀物が高くなることは、これまでも何度もあったことである。しかしながら、今度は事情が全く異なる。
今までは、買い付けや干ばつなどで異常な高値になったりしたものである。こうしたことの対策として、畜産農家は農協などを通じて「安定基金」を積んでいる。激変緩和のためである。それも、あと2年ほどで底を尽きそうである。
今回の、コーンの高騰はアメリカのバイオ燃料への急激な移行によるものである。現在エタノール蒸留所が100少々稼働しているが、計画も含めて60近くのもの蒸留所が2,3年で稼働することになっている。政府の補助がこの背景にある。
昨年まで、エタノールが400万ガロン生産していたがこれらが稼働するようになると、1900万ガロン生産体制になる。それらが達成されると、アメリカ中西部のアイオワ、イリノイ、ミネソタ、ミズーリー州などでは、輸出用のコーンはなくなると報告している。(Staying Home:Institute forAgriculture and Trade Policy 2006.12.)
アメリカのコーン由来の、エタノールのエネルギー効率は1.3倍しかない。計算によるとマイナス(0以下)とする学者もいる。ブラジルのサトウウキビ由来のエタノールのエネルギ ー効率が8.0倍であるのに比較すると、これが政策的な動きであることが解る。
家畜用のコーンは今年になって、20%程度上がっている。昨年から見ると、30%も高騰している。前述のように、これは不作や騰貴的要素のものでない。当分は、待てば下がるものでもない。
日本をはじめとする、先進国では消費穀物の半分以上を家畜が食べている。こうした異常な形態が緩和されるなら歓迎されることではあるが、飢餓にある人間を傍目に家畜に穀物を与えることが倫理的に問題であろうが、家畜どころか車に食わせることは、更に問題であると思われる。
今こそ、畜産加工業から本当の姿の畜産に戻るチャンスである。