著者の弁によれば今最も売れてている、ベストセラーとのことである。「農業消滅」農政の失敗がまねく国家存亡の危機:鈴木宣弘著:平凡社新書880円(税別)である。
農業農村の危機を身をもって感じている者にとって、読んでいるうちに気持ち悪くなる、極めて不快な本である。本書が不快なのではなく、現実を的確に言い当てているからである。そして絶望的な僻地の未来を想うと、行く末を考えれば、今からでも遅くはない。
日本の戦後政治が一貫して、経済成長に浮かれ、地方を捨て、食料を捨て、環境を汚染し、ひいては日本文化の礎を破壊してきたことを、今こそ反省するべきであると思われる。
経済学者鈴木氏の本書の仔細で広範に細部にわたる指摘を、国は悉く潰してきている。何のため。商工業優先のためである。
流行語にもなった『今だけ、金だけ、自分だけ』は鈴木氏の言葉である。
本書の内容は、以下のいくつかの表題が言い表している。
2035年には食料自給率は大幅に低下する
コメ農家は存続さえ危うい
日本はグローバル企業の餌食になる(※戦後一貫してなってきている)
亡国の種子法廃止(※日本の胃袋を独占企業に任せる)
危ない食料は日本向け(※規制が緩く世界で廃棄対象食品が集まっている)
安全保障としての国家戦略の欠如(※武力に特化した安全保障しか考えない)
農業過保護論の虚構(※日本ほど農業が保護されていない国はない)
地域循環型の経済が命を守る(※全くその通り、世界は向かっている)
結局今頃になって、ようやく生態系農業が有利なこと、環境にも優しいことを気が付く気はじめている。ようやく「みどりの食料システム戦略」などと言い出したが、農村のことや環境のことなど考えていない。時すでに遅しであるが、相当な力量が政治に求められる。
『今だけ、金だけ、自分だけ』社会に見切るを付けることが求められている。