西山太吉が亡くなった。91歳であった。元毎日新聞記者の西山太吉は、沖縄返還の核密約を暴いたした。報道が権力の擁護でしかないことをも暴き出した。西山の取材は沖縄返還に伴う核への国民の不安を受け、正鵠を得た取材であった。しかい機密書類の入手方法の方が大きく取りあげられ、ワイドショー的扱いになる。
西山の入手した文書を元に、社会党の論客の横路孝弘と楢崎弥之助が国会で追及した。書類は本物であるとしたが、沖縄返還後も核兵器は残すという密約について政府は認めなかった。妙な話である。
西山は外務省の女性事務官に言い寄り、肉体関係を重ねることで密約文書を入手した。関係を重ねることで女性事務員から文書を入手する行為が批判され、毎日新聞の不買運動まで及ぶことになった。核密約はそっちのけで、男女関係が面白おかしく取り上げられるという、政権の思惑通りの展開になる。
西山は東京地検に逮捕されるが、何度も控訴するが結局は最高裁の国の外交機密の不開示は妥当とされる。
21世紀入り、西山が入手した核持ち込みの密約の事実が判明する。国家は外交で嘘をついても構わない、国民に知らせなくても良いという前例を残した。国民の知る権利などどこにもないのである。男女関係を国家の密約に優先するという、報道にも大きな汚点を残すことになった。
安倍政権時代の、特定秘密保護法案を審議する参議院国家安全保障特別委員会で、参考人 として西山は意見陳述をしている。そこで、「外交交渉のプロセスをいちいち公開する必要はないが、結論は全部、国民に正確に伝達しなければ、民主主義は崩壊する。特定秘密の領域は相当限定される べき」 と述べている。
そして現在、辺野古新基地建設に西南諸島のミサイル建設に勤しんでいる。核は持ち込まなかったとして、ノーベル平和賞を佐藤栄作首相は授与されたが、その根拠が虚偽であったことが判明した場合、返還はないのだろうか。
いずれにしても、佐藤政権側の大勝利である。それは安倍晋三まで引き継がれている。