そりゃおかしいぜ第三章

北海道根室台地、乳牛の獣医師として、この国の食料の在り方、自然保護、日本の政治、世界政治を問う

ヴィーガンの主張に同意はするが畜産の否定まで行けばそれは、お門違いである

2021-03-27 | 石破茂

ヴィーガンとは採食主義のことであるが、ベジタリアンのように個人の範囲での食事行動とは大きく異なる。ヴィーガンは採食原理主義者ともいわれ、食肉拒否のの範囲を広げ、動物起源のものを食べない、使用もしないというものである。そしてその社会活動活動まで含めたのがヴィーガンである。
ヴィーガンの出現の背景となっているのが、大量投資による大量生産とそれに伴う大量廃棄のアメリカの工業型畜産形態である。動物の虐待であり、それに伴う環境破壊である。それならそうした工業的畜産の廃絶をターゲットにすればいいものを、畜産の全否定にまで行きついたのは倫理の問題もある。
ヴィーガンは次のことを訴えている。肉食は健康への障害になる。飼料の生産にも家畜の飼養にも環境破壊が伴う。殺すために飼うこと、それが倫理的な問題であるというのである。舌の快楽のために家畜の命を奪っているというのである。
これらヴィーガンの主張の多くは、工業的畜産には当てはまりはするが、我々が勧め普及を目指している、アニマルウェルフェア(家畜福祉)に配慮した畜産とは矛盾するものではない。ヴィーガンはだから畜産を変えようというのではなく、食肉を拒否しようというのは人類生理への挑戦である。
人類は狩猟によって群れを作って生き残ってきた動物である。本来は肉食であるが、農耕を取得してから集落を作り、食料の備蓄をし富を持つようになって今日に至っている。我々人類の生体は動物を食することで生命を維持してきた。動物蛋白からでなければ接種できない必須アミノ酸がその歴史の証左である。
ヴィーガンはこの克服のために人口肉を開発している。この開発は急である。不味くて食えない時代は終わろうとしている。然しその生産に大豆は欠かせないが、見方によっては大豆の加工食品の一つに過ぎない。ヴィーガンをいくら装っても身体は肉を求めているといえる。遺伝子組み換え技術がここに生かされているなら、それも大きな矛盾といえる。
ヴィーガンが訴える、「工業型畜産を打倒せよ!」は正しい。穀物多給の肉の脂肪酸にも大きな問題が残る。日本では4000万トン弱の穀物が消費されているが、そのほぼ半量が家畜に給与されている。ヴィーガンは食料問題、飢餓の問題も同時に訴えている。これにも異論がない。工業型畜産がその原因の一つであることも間違いはない。
生理に合わない穀物を大量に家畜に与えカロリーを圧倒的に落とす飼養形態こそが、私が畜産加工業と呼んでいるものである。無関税て安価な遺伝子組み換え穀物を大量給与して高価な乳・肉・玉子に変換する畜産のことである。
ヴィーガンは都会の、家畜も見たことなのない高学歴の富裕層背景に急速に広がっている。家畜と暮らし共に生きてきた歴史に彼らは無知なのである。

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