使用内容を公開しなくてよい官房機密費が、どうやら選挙に使われていたらしい。12年前の沖縄選挙は、現職の大田昌秀氏に対し、自民党の支援を受けた稲嶺恵一氏との熾烈な知事選挙となった。
普天間基地を県外にと訴える大田氏に対し、県内で受け入れて産業振興の起爆にと訴える稲嶺氏と、保革激突のはっきりした選挙であった。絶対に負けられない自民党は、稲嶺陣営に官房機密費を約3億円出したとのことである。当時の小渕内閣の、官房副長官の鈴木宗男氏がテレビのインタビューで答えている。
官房機密費とは、国家の機密に関することで、公にするには問題のある場合に支出されるのが、本来である。鈴木氏の証言は更に、機密費は閣僚の衣服のために使われていたとか、旅行に出かける時には数10万単位でそっと渡していたとのことである。断った人はいないと証言していた。
自分たちの小遣いに使うならまだいいだろう。不法ではあるが、かわいい罪のない話といえなくもない。ところが、こうした政権与党のために使われたのであれば、民主主義の基本である選挙の基本が揺るぎかねない。しかも、稲嶺氏は当選した。大田氏は凄まじい資金力の差を感じと当時を振り返る。
官房機密費が正常な目的に使われるなら、あっても良い資金ではないかと思われる。しかし、『機密』を良いことに使いたい放題であったことは許されることではない。
この大田、稲嶺の知事選挙の争点が皮肉にも普天間基地の移転であった。民意を反映しない結果となったのであろう。いまだに決着しないどころか、大田を推した民主党であるが、官房機密費を選挙資金にした稲嶺が当選したのも皮肉な話である。政権与党となった、民主党は稲嶺の案に落ち着かせようとしている。