昨日の続きである。これまで地震の被害を地上での出来事に限局して検討されてきた。地震の揺れに限った被害は、津波の対策や建設物の耐震性を強めたり、原発だって同じように揺れに対する被害対策でしかなかった。
ところがトンネルに関しての対策はない。基本的にトンネルは地震に強く耐震性の検討も対策も基準も何もないのである。地上浅いトンネルはそれでいいかもしれないが、多くの反対を押し切って南アルプスのど真ん中を通すことを選択したJR東海の場合のトンネルは、危険そのものである。
上図は南アルプスのJR東海の資料であるが、黒い直線は断層である。これに硬度や粘度や密度など全く異なる地層が折り重なるようになっている。地上では揺れに継発することに因る被害が震災となるが、地下では大きく異なっている。
地下では、岩盤のズレ、岩盤の歪みによる応力の変化、無数の余震が継続し大地震の誘発を促す。これ等のことは地上のように、人力で対応などできる代物ではない。簡単に言えば、地中深いトンネル内での震災被害は修復は不能になるのである。
JR東海は、リニアは浮いているので地震の揺れは受けないし、超電導の性質上脱線は起きないと説明していいる。早期地震予知システムが働き、本震の10秒前に制動が働き約90秒後に停車することになる。86%はトンネル内である。計算上は10キロ以上走行の後停車することになるが、もちろんその時は列車は浮上しているわけではない。そこで本震を受け、度重なるS波を受けることになる。
浮上し易くするため、軽量化されたリニア車両は薄い鉄板度を使い、極めて脆弱な車体といえる。東京名古屋のリニア新幹線の86%はトンネルである。86%の確率で列車は地震をトンネル内で受けることになる。脆弱な車両はどれほど乗客を救ってくれるだろうか。
唯一完成している千石非常口(上図参照)の出口は、標高1500メートルの山の中である。夏の快晴時期なら爽快かもしれないが、冬は極寒の高さである。そこからの避難方法はヘリポートでも作らなければならないが、それも決まっていない。地元の協力を依頼するとされているが、震災で地元も被災しているだろうし、誰に来てもらうのだろうか。ヘリポートがあったとしても、震災の最中かけつけて数百人を運んでくれるヘリコプターがあるとは思えない。無計画というか無責任そのものである。
運転手をはじめとする乗務員はいないとしていたが、何人かは乗車させるようである。ほんの2人程度で500人以上の乗客の避難誘導が、どれほど可能とJR東海は思っているのであろうか。
更に、大阪までの延伸は奈良の地下を抜けるのであろうが、ここは東京・名古屋に倍する断増があって、より危険と地震学者は指摘する。大きな矛盾を抱えながら、巨大震災の危険性の論議を放棄しながら、この巨大プロジェクトを何故進めようとするのであろうか。
リニアは理に合わない。